特集

コロナ禍で考える未来の教育「人〜次世代〜」を育てるということ

2020年9月3日

コロナ禍で考える未来の教育 「人~次世代~」を育てるということ

新型コロナウイルス感染拡大を受け、緊急事態宣言からの学校の臨時休業。異例の事態に戸惑いを隠せない教育現場。
今後さらに変化の厳しい時代を生き抜く次世代を育てるための教育とは!?
※本特集では換気、手指消毒など感染予防を施し取材しています。

新しい未来を築く次世代を育てるために
~4市町長トークセッション~

奈良市長/田原本町長/天理市長/三宅町長

コロナ禍で考える未来の教育 「人~次世代~」を育てるということ

*ぱーぷるmama編集部で主催し、オンラインによる対談を実施しました!

コロナ禍で考える未来の教育 「人~次世代~」を育てるということ

 

オンライン授業の
課題と可能性

森田町長
三宅町は奈良県で一番小さな町で、小学校は1つ。1学年は2クラス50人くらいです。新型コロナによる臨時休業中、オンライン授業はできていませんでしたが、小さな町だからこそ、電話で一人ひとりの様子を確認していました。

並河市長
子どもの集中力の問題で、オンライン授業を双方向でするまでは難しかったですね。朝の会やホームルーム、質問に答えるということをやってみました。でも、動画ならいつでも見られるということで、臨時休業の期間に得意とする先生方と1000件くらいの動画を配信しました。今後、1人1台タブレットが所有できたとき、どれだけ細やかな対応ができるかが課題になっていくのではないかと思います。

仲川市長
オンライン授業は、新型コロナに関係なく、例えば、警報が出た日でも、自宅でみんなと繋がり、協働学習をするなどの活用ができます。いろんな事情で学校に来られないお子さんも参加しやすくなります。奈良市では、今、新型コロナウイルス感染症への不安がある場合については、学校に必ず来なくてもいいということを全児童生徒に通知しています。自宅学習をしたい子は欠席扱いにはしません。学びの選択肢を実践しています。ポイントは、自律学習です。一人ひとりがどういう順番・方法で学ぶかを身につけて、自分で学びを身につけることがゴールかなと思っています。

並河市長
オンラインでできることに挑戦していくと、朝の会に不登校のお子さんが参加できるようになったというケースも出てきています。選択肢を増やすといういい機会になりました。一足飛びにはいきませんが、教育現場全体でこのムードを作っていくことが大切だと思っています。

コロナ禍で考える未来の教育 「人~次世代~」を育てるということ

森町長
学びの環境を整えるのは私たち行政の仕事です。ただ、今までの教育は、教壇で授業するということが前提でしたので、教育のコンテンツが追いついていない状況でもあります。

ICT活用が教育現場に
与える影響と先生のあり方

仲川市長
先生の役割は今後大きく変わってくるでしょう。子ども達それぞれ理解度が違うものです。AIで一人ひとりの能力を見ながら、先生は子ども達のフォローをする。先生がリーダーシップをとるのではなく、伴走者としての役目に変わっていくのだと思います。

森田町長
ICT活用教育(※1)はこれからのスタンダードになっていくと思います。でも、バーチャルとリアルの線引きが大切ですね。どう融合させるのかが課題です。リアルでは、家庭と先生の関係性が重要になるでしょう。

並河市長
技術によって合理化していく部分はありながらも、生きていく力も育んでいかないといけません。それは自己肯定感を養うことです。先生がこれまで以上に子ども達一人ひとりや家庭と向き合っていけるように、行政も一緒に整えていくことが大切だと思います。

森町長
今まで教育現場にICTを導入しようと思っても使いこなせないという現場の不安はありました。でも、新型コロナをきっかけに導入は加速しました。子ども達のことを考えるとその必要性を感じているのだと思います。

森田町長
当町でも、一昨年から議論をしてきました。先生からは「どうしたらいいかわからない」と。でもやっているところに視察に行って実際に見ることで、理解が深まり、去年補正予算で整備することが決まりました。奈良県は「G Suite for Education(※2)」を県全域で導入し全国的にも注目されています。どこにいっても同じシステムということで、先生方にとっても学びやすい環境です。

並河市長
これからは、先生にとってもおもしろいと感じられる教育現場を作っていく必要がありますね。授業のやり方、子どもを育てるということがクリエイティブだと感じてもらえるといいなと。教育現場が魅力的な職場で優秀な人材が集まるかどうかです。「GIGAスクール構想(※3)」を活かす中で、意見の共有も容易になり、離れた地域の人ともコミュニケーションをとることができるなど工夫が広がれば、よりやり甲斐が出てくるのではないでしょうか。

仲川市長
今、教員免許を持っていなくても、授業を行うことができる制度もあります。当市も民間企業に学校に来て授業をしていただくという取組もしています。いろんな社会を経験してから、先生になる人がいてもいいかもしれません。

 

教育格差とは何か?
教育の価値観

仲川市長
公立には公平性という罠があり、全員揃うまでやらないという考えが対応の遅れにつながってしまいます。今回の臨時休業において在宅での学習支援を行うにあたり、奈良市が持っているタブレット2500台を利用し、インターネット環境を確保できない家庭への貸出を行いました。現時点では、奈良市全域の4年生以上の児童生徒全員に行き渡っていますが、3年生以下にはまだの状態です。あるぶんだけでもスタートをきって進めることが大切です。

コロナ禍で考える未来の教育 「人~次世代~」を育てるということ

並河市長
家庭環境や、塾に行っているかいないかでも、学習機会には差がでてきますね。天理市では、学生支援と兼ねて、大学生が中学生を教えるという「天理まなび支え合い塾」を実施しています。大切なのは、自分のペースで学ぶ力を身につけることだと思います。子ども達が切り開いていくものに、形式的な平等が公平かというとそうではないと思います。それぞれの子ども達が選択しながらがんばれるという公平さを大切にしたいですね。

仲川市長
本来の学習指導要領はあくまで最終地点を示しているだけですが、今の教育は、学び方、順番、ボリュームもフレームワークにはめ込みすぎているため、ついていけない子がでてきているのではないかと思います。最低限のゴールを満たせれば、その過程は多様であっていいと思います。形式的な平等だけを第一義に考えていると頭をうちます。今の社会はまだまだ形式至上主義です。本質は変わっているのに、教育と公務現場が日本社会では取り残されている状態です。

森町長
現状、教員の成果は数字で表せないため評価がしにくいです。それらを検証していかないと、10年後の教育はどうなっていくでしょう。

仲川市長
奈良市の学力向上システム「学びなら」では、AIで学びの履歴を溜めています。先生が違えば、教え方も、子ども達の理解度も違う。AIでは、子どもの強み弱みを知ることもできると考えています。

並河市長
教育格差を議論していますが、何をもって教育というのか、その根本を考える時期にきているのではないでしょうか。各学年でどこまで勉強ができているかということではなく、社会に出たときに、どれだけ周りの人と協力し、生産性をあげられるのかを考えた育成が必要ではないでしょうか。今までは通知表や偏差値でどこかの学校を目指していましたが、多様性を大切に、得意な部分を生かすことをみていく必要があります。

森田町長
英語が不得意だった僕の同級生は、夢を実現するために海外へ行って生活していたら、話せるようになりました。環境の影響は大きいですが、話そう!とか話せる関係をつくろう!と思うこと、コミュニケーション能力が大切です。ICT活用のポイントは、繋がりたい人と繋がれるということ。活用の本質はそこにあって、夢をみつけるツールになればいいと思います。子ども達の「やりたい」を応援することが大切です。ICTをひとつのツールとして活用すればいい。社会と子どもたちを繋ぐ役割ですね。

並河市長
人として伸ばせる部分はどこかということです。いろんな分野・社会で活躍されている人をもっと見せていく必要があります。社会に必要とされるスキルを見せて、どういう場所で活躍していこうかを考える機会をつくることも必要です。これからはいい大学を出ているからと言って評価される時代ではありません。社会がどこを評価していくのか、学校現場や保護者の認識も深めていかないと、子ども達を評価する基準がぶれていきます。

仲川市長
大学入試の入り口が根本的に変わっていないことが問題です。産業人材を育てるというところから、どんな人材がほしいかをバックキャストして小・中学校でも教えるといいと思うのですが。今、大学進学率は60%。多くの子どもが大学に入っていますが、漠然と大学に行くという選択肢はなくなることを期待しています。

並河市長
ICT活用教育の導入とともに、溢れている情報を整理する術も身につけていかないといけませんね。また、自分の意見を持ち、表現できる人材が求められます。メディアリテラシーも含めて勉強をしていかないと世界に通用できません。

森町長
ネット環境が教育に入ってくるのはイノベーションです。今まではスマホをもってきてはダメ、子ども達とネットを繋げてはダメと。でもこれからは自分で選べる時代になってきました。情報の整理術を身につけて、自分のプレゼン術が求められる時代ですね。教育が変わるこれからの時代は楽しいのではないでしょうか。チャンスだと思います。

大人も一緒に
明るい未来を描く

仲川市長
大人も子どもも、未来がどうなるか正解をもっていない状態です。だからこそ、精神的には対等な立場です。協働してよりよく生きていく時代です。教育の世界だけで物事を考えるのではなく、実社会からも学びの要素が入ってきます。大人も子どもも一緒に向き合っていきたいですね。

森町長
コロナ禍は、大人も子どもも初めての経験で、共通の課題です。大人も悩みながら対応していること、考えて結論を出していること。その姿を見せることがいい学びの場になると思います。

コロナ禍で考える未来の教育 「人~次世代~」を育てるということ

並河市長
価値観も生き方も多様だということですが、ある種厳しい部分もあります。多様とはいえ、「自分は一体何者か」に戸惑ってしまわないように、子どもの頃から自尊感情を育みつつ、周りにも自分のいいところを認めてもらって、周りのいいところも認め、常に学んでいかないといけません。積み重ねていきながら、教育を地域の方と考えていきたいです。

森田町長
今朝、駅に立っていると小学生に「これダンゴムシのメスやで」と教えてもらいました。その時に初めてダンゴムシのメスとオスの違いを知ったわけですが、子どもから学ぶこともあって、「お互いさま」と思います。周りの人たちから、気づかないことを気づかせてもらったり、おもしろいと思うことに学びがあったり。やりたい!おもしろい!誰かに共有したい!という感情を認め合って、いろんなことを学び合う。その連鎖が広がり、いつも社会に学びがあればおもしろいなと思います。

コロナ禍で考える未来の教育 「人~次世代~」を育てるということ

※1「ICT = Information and Communication Technology」パソコンやタブレット端末、インターネットなどの情報通信技術を使い、オンラインでコミュニケーションをとったりデジタルコンテンツを活用した教育手法。
※2 教師と生徒を支援するために設計された複数の教育アプリケーションが統合されたクラウド型プラットフォーム。Google社が開発。
※3 「GIGA = Global and Innovation Gateway for All」全国の学校現場において1人1台の端末と高速大容量の通信ネットワークを整備し、多様な子どもたちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化された教育を持続的に実現させる構想。

《撮影協力》

ONE UNITED LAB

ONE UNITED LAB
今年の6月17日にオープンしたカフェ。ベビーカーで来店する近隣に住むママには、すでに人気のスポット。ソファ席、キッズスペース、テラス席、自習室もあり、ママ友とゆっくりできる条件がそろう。

奈良市三条宮前町7-1 なら100年会館
0742-32-1011
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毎週火曜・金曜休(火曜祝日の場合は翌水曜休)
近隣に有料P有
https://one-unitedlab.jp