特集
職種や年齢も違った“みんな”が関わって、子どもたちが社会で生きるチカラを
2020年9月4日
千葉県流山市でシェアサテライトオフィスを運営し、母親たちのキャリアと子どもたちのキャリア教育という二軸で事業を展開している尾崎えり子さんに「働くことと子どもの学びとの繋がり」について、教えてもらいました。
※本特集では換気、手指消毒など感染予防を施し取材しています。
《教えてくれたのは》
株式会社新閃力 代表取締役社長
尾崎えり子さん
千葉県流山市をベースに民間学童のプロデュースや行政とともに創業スクールを立上げ、コミュニティ+教育+オフィスの3つを軸に展開するシェアサテライトオフィス『Trist』を運営。テレワーク推進賞やWork Story Awardなどを受賞。 全国ネットや全国紙に数多く取り上げられる。現在9歳と7歳の子育て中。2019年、1年間太田プロダクションのお笑い養成所を13期生として卒業。現在、副業で生駒市の教育指導課教育改革を担当。
HP:https://shinsenryoku.com/
学校と社会が繋がることで
学びの可能性が広がる
「新型コロナによる影響はというと、元々の働き方がテレワークなので仕事は問題なかったのですが、変わったのは子どもが学校に行けなくなったこと。じゃあ子どもをシェアオフィスに一緒に連れてきて、ここで働いている大人が子どもたちにワークショップをしようと。エンジニアが機械分解会を、アパレル関係の人はミシンやアイロンでマスク作りを、老犬の介護やドッグトレーナーが動物のことを教える。逆に子どもが先生になることもある。大人も子どもも学べる機会になりましたね」と言うのも、尾崎えり子さんは、千葉県流山市という都心から郊外にある町でシェアサテライトオフィス『Trist(トリスト)』を運営しているからだ。尾崎さんが代表を務める(株)新閃力(しんせんりょく)は、「全ての子どもたちに親の文化資本に寄らない経験や人脈をおもしろく作る」という目的がある。『Trist』は企業のサテライトオフィスに地域コミュニティが加わったシェアオフィスだ。その先には、学校の空き教室をシェアオフィスに活用して、企業や地域の大人が学校に通う場を作りたいという想いがある。
子どもたちは毎日通う学校で社会を学び、企業は働き方改革や次世代を育てるなどのきっかけに、地域の人は何かやりたいことが見つけられたりする、そんな場にしていくという展望だ。「今は、学校と社会があまり繋がっていない。同じ年齢で同じ属性の人としか接する機会がなく、親や学校の先生など限られた大人からしか学べないのはもったいない。例えば、小学校の中に高校生が入るのでもいいし、おじいちゃんが来るのも良い。地域の中に様々な年代の経験や職業の人がいる。正しい正しくないではなく、国内海外問わず多様な価値観や人と関わっていくことが考えや視野を広げることになる。例えば、教科書でアフリカの地図を見て、この国の人はこういう生活で・・・と学ぶことにプラスして、オンラインで現地の人と話してみるとより学びが深くなる。そういう学びをすべて先生だけに任すのではなく、地域の人も関わって、それぞれのキャリアを生かして子どもたちに教えるというバックアップが学びの可能性を広げることになると考えています」。
子どもは対等で
学べる存在
「自分はプリンセスになれると思っている3歳の女の子や、動画制作が得意な小学6年生の男の子と友達なんです。子どもの視点や考えを大人も学べる」。つい、大人は子どもに教えるというスタンスになるが、双方から学んで一緒に考えることが『育てる』ということだと、尾崎さんは言う。これから先の社会は価値観や求められる人材が大きく変わる。大人の経験が必ずしも正解ではないから「一緒に考えてみよう」というスタンスでいるという。
これからの未来は
どんな時代になるかわからないから
「勉強して大学に行って一流企業に入って・・・といった、親世代の成功体験はこれからの未来は参考にならない。親もわからない世の中になるからこそ、社会でどう生きるかを教えてあげられるかどうか。こうしなさいではなくて、あなたは何をしたいの?何をすれば幸せなの?と、問いかけ続けたら、すぐに答えられなくても子どもは自問自答するでしょう。小さい頃からどうしたいのか自己選択をしていく。世の中は不自由だから、どう交渉したら自由を獲得できるのか、自分の強みを生かしてどうアウトプットできるかが、大人になったときに自分のチカラで生きられる子になると思うんです」。