特集

【玉井式子育て教室II】- Vol.06 – 幼少期に育む力「自己効力感」「自己肯定感」とは

2021年8月13日

【玉井式子育て教室I】- Vol.05 - 進化し続ける世界の教育と日本の現状とは?

これからの子どもたちは、これまでよりも世界に目を向けなければいけない時代を生きることになります。今のままの教育で良いのか、変わっていかなければいけない点は何なのか。グローバル時代を生きる子どもたちの成長のために、どのような価値観が必要なのでしょうか。
何のために教育するのかという、教育の価値観をしっかり持って、「親が笑顔でいること」「子どもへ何よりも愛していると伝えること」そして、「花(成果)を咲かせることだけでなく、丈夫な根っこ(土台)を育ててあげること」を大事にする。そう言うのは、「世界に負けない子に育てる」教育を提唱し、独自の能力育成教材を開発し続けてきた玉井満代先生。

玉井先生の考える子育てと教育について、48回にわたり、さまざまな視点でお届けします。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

《教えてくれたのは》
(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ
代表取締役 玉井満代さん

京都市生まれ、ICT教材クリエイター・脚本・演出家。20年にわたる全国数百の学習塾での指導経験を生かして、学校、またインド、ベトナム、シンガポール等で続々と導入されている「玉井式 国語的算数教室®」「玉井式 図形の極®」など、パソコン・タブレットを使用して学習する教材を全国展開。2021年現在、日本全国で24,000人が学習しており、有名私立小学校・大手学習塾・幼稚園・保育園及び学童などで広く活用されている。また、インド著書には「世界に出ても負けない子に育てる」(青春出版社)他。国内外での年間講演回数は120回(2018年度)を超える。洛南高等学校附属小学校で「玉井式 図形の極®」が授業カリキュラムとして取り組まれている。また、2021年度より、奈良育英小学校の副校長に就任。

>> TAMAISHIKIオフィシャルサイト
>> 奈良育英小学校

 

– 編集部 −
第6回目のメインテーマは「自己効力感」「自己肯定感」。
自己効力感は「できると自分を信じられる力」のことで自己肯定感「ありのままの自分を受け入れられる力」につながります。
日本の子どもたちは世界に比べて自己肯定感が低いという結果が出ています。なぜそうなってしまうのでしょうか。
失敗することを恐れずチャレンジし、人生を諦めずに逞しく生きていくためには、子どもをどのように育めば良いのかを、玉井先生にお伺いしました。

子どもが「自分はできる」
という思考になるには?

まず、自分の子どもの長所をよく見ることです。親はついつい子どものできないことにフォーカスする傾向があります。例えば、子どもが95点や90点のテストを持って帰ってきたとしても、取れなかったマイナス点について指摘するなど。「どこを間違ったの?」と間違えたところを聞いたり、「こんなところを間違えているじゃない。ちゃんと見直した?よく問題を読んだの?よく読んだら100点だったのに…」といった声かけだったりすると、子どものメンタルが落ち込み、「わたしは(僕は)どうせできない」というマイナス思考になりかねません。

そうではなくて、どんな点数だったとしても「今回は●点だったのね。ここもできているんだから、もうちょっと頑張ったらこれもできるようになるわよ」とシンプルに言ってあげたら良いのです。何点であってもマイナス部分を指摘してしまうと、子どもは「100点の自分しか褒めてもらえない」といった気持ちにもなってしまいます。もちろん、親としては心配ですし、こんなミスしたらもったいないとか、こんなミスばかりして大丈夫だろうかと勝手な不安が無意識に広がり、できないことにフォーカスしてしまう気持ちもわかります。しかし、そういった負の言葉がどんどん子どもの中にたまっていくと、「どうせできない自分」という思考、つまり「自己効力感」が下がってしまうのです。

日本の社会は「沈黙は金」といい、聖徳太子の頃からずっと「和」を大切にしてきました。そのため、自分の子どもを人前で褒める文化があまりありません。どちらかというと、子どもが横にいるのに「うちの子は宿題もやらないし全然だめなの」などと謙遜して言うことのほうが多いのではないでしょうか。「うちの子は習い事を頑張っていて努力家だし、お手伝いもしてくれるし、とても良い子なんですよ」なんていう親御さんがいたら、ちょっと変わった人のように感じてしまう。しかし、それはただの日本の文化なのです。

しかし、子どもにとってはどうでしょうか。やはり親が自分を人に自慢してくれると嬉しくてたまらないものです。小さいうちは、そのために生きているようなものですから。
私の講演会では、親同士で約束して「自分の子どもを褒めよう会」といった機会をもってほしいとお願いしています。親同志が集まる交流会などをする際、お互い自分の子どもを褒め合おうとあらかじめ約束して、「うちの子はこんなこともできるようになった」「うちの子にはこんな良いところがある」などと言い合ってみてください。きっと、次の日から子どもはイキイキとしていますよ。

勉強しながら、本を読みながら、運動をしながら、何でも良いのですが、子ども本人が「自分はこれが得意かも」と思えることが大切です。そう思えるようになるためにも、親はまずは認めてあげること。できるところに親が目を向けると、きっと自分はできるようになるという強いメンタルが育まれていきます。そのように、自己効力感をしっかり育んであげれば、心配しなくても、大きくなっていくうちに自分で自分の道を選び、切り拓いていけるようになります。子どもが切り拓いていく道、それはそもそも親が決めるものではないのですから。

「自己効力感」とは?

自己=子どもが
効力=周りに対して自分に影響力があると感じること


例えば、赤ちゃんが泣きだしても親は「静かにしなさい」「何度言ったらわかるの」とは言いません。「オムツかな?おっぱいかな?」とオムツを替えてあげたり、おっぱいあげたりします。そうすると赤ちゃんは、自分が泣いたら親が世話をしてくれて快適になったと感じます。このとき自分は周りの人に影響力があるんだという感覚が育まれているのです。つまり、これが自己効力感「できると自分を信じられる力」です。親は赤ちゃんの頃はこうして普通に自己効力感を育てています。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

また日本の幼児教育は優秀で、自由な遊びの中でイメージ力をつけたり、子どもを認めることを大切にしていたりします。しかし、幼稚園や保育園、もしくは小学校に行くようになり知的学習になった途端、急に「先生の言うこと、親の言うことを聞きなさい」「これをやらせましょう」と大人が管理者になってしまう。子どものほうが周りに影響力を及ぼすはずなのに、親や大人から言われたことをしなければならない、しかもできないと叱られるという形にすり替わってしまうのです。
2〜3歳の頃は自己主張していた子どもたちが、年齢が上がっていくにつれて自己効力感を失っていくことがあります。なぜなら、子どもの気持ちや意見より、大人がやるべきだと思うことを優先しだすからです。子どもが「今日はやりたくない」と思って言ったとしても、それを受け入れず頑張らないことを責める。それでは自己効力感は低くなる一方です。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

 

自分と他人の違いの中で
自己を肯定できるように

自己を肯定するまでには、自分と他人があるという認識がまずは必要です。
赤ちゃんだと自分とお世話してくれる人以外のことはあまり考えていません。最初は自分が泣くと親や周りの人がお世話して不快なことがなくなる。自分には影響力があると感じて育っていくのですが、ある年齢になると、自分以外の人がたくさんいることに気がつく。その時に自己と他人を認識しはじめ、自分の影響力を保とうとしてイヤイヤ期があり、無意識にも自己を確認しながら生きています。それを経ていくうちに自己と社会というものを理解し、自分勝手にしたいだけじゃ駄目なんだと協調性が身についていくのです。
しかし、その過程を無視され、義務のように時間やするべきことを管理され、自分ができないことまでできるようにならなければならなかったり、プレッシャーをかけられたりするとどうなるでしょうか。自己というものを自覚し、自分と他人が違うということが分かってきたときに、「これもできないの?どうしてできないの?」などと言われ、「あの子はあれができる、これもできる」と他人と比べてられてしまうとどうなるでしょうか。やっと自己というものがわかってきたけれど、それを肯定できないということになってしまいます。子ども自身は肯定といった言葉も知らないかもしれません。しかし「自分はできる」という思考になるのは、親や大人の言葉がけしだいなのです。

親に認めてもらいたいという気持ちがあっても、そのうち成長していろんなことがわかってきたら、「もう無理でしょ」という開き直りになってしまうこともあります。そこからまた、次の成長期の問題が出てくるのです。自分に、「自信」や「自分ならできるかも」といった気持ちがないと何事もチャレンジしようとしなくなります。チャレンジして失敗することが怖くなるんです。しかし、失敗など本当は怖くないのです。本質は、自分が駄目な人間だと他人に思われるのが嫌でチャレンジできないということがあります。自分と他人の違いの中で、できてもできなくてもありのままの自分を受け入れられる力。それが自己肯定感なのです。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

家庭で自己効力感・自己肯定感を
育てるには

子どもの話をちゃんと聞く時間を持ってください。親はどうしても「あーしなさい、こうしなさい」と言ってしまうものです。でも、寝る前の10分間でもいい。もし子どもが「こんなことがあってね」と言ってきたとしたら、「そうなんだね。そう思うんだね」と肯定的に聞いてあげてください。そうすると、自分はお母さん・お父さんに影響力を与える力があるんだと子どもは感じます。普段は怒られたりするけど、こうやって話を聞いてくれて認めてくれるという気持ちが、自己効力感になっていく
大人になって自分に自信をもって生きていくというのは、実際難しいことではあります。その中でも「自分は失敗もするけど大丈夫だ」「失敗しても諦めないで生きていこう」と思えるようにするには、「失敗しない自分でないといけない」ではなくて「失敗しても自分には力がある」という思考を育んでほしいと思います。そのためにも「あなたの言うことを聞いていますよ。認めていますよ」と表現してあげてほしい。それが自己肯定感につながると私は思っています。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

ちょっと難しいかもしれませんが、「自分は間違っていない」ということが自己肯定感ではなく、「自分は失敗もする、間違うこともある。でも、やれることはとことんやってみよう」というのが自己肯定感だと思います。それは客観的に自分を見つめられるようにもなります。失敗やできないことは恥ずかしいことではなく、諦めたり投げやりになったり、頑張っている人を斜めで見たりすることの方が格好の悪いことだと思います。自分の存在を肯定できてこそ、他人を認め肯定できるようになる、と思います。

 

次回の「Vol.07」は8月20日(金)にお届けします。お楽しみに!

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