特集
【玉井式教育学I】– Vol.14 –日本はどうグローバル社会になっていく?
2021年10月8日
これからの子どもたちは、これまでよりも世界に目を向けなければいけない時代を生きることになります。今のままの教育で良いのか、変わっていかなければいけない点は何なのか。グローバル時代を生きる子どもたちの成長のために、どのような価値観が必要なのでしょうか。
何のために教育するのかという、教育の価値観をしっかり持って、「親が笑顔でいること」「子どもへ何よりも愛していると伝えること」そして、「花(成果)を咲かせることだけでなく、丈夫な根っこ(土台)を育ててあげること」を大事にする。そう言うのは、「世界に負けない子に育てる」教育を提唱し、独自の能力育成教材を開発し続けてきた玉井満代先生。
玉井先生の考える子育てと教育について、48回にわたり、さまざまな視点でお届けします。
《教えてくれたのは》
(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ
代表取締役 玉井満代さん
京都市生まれ、ICT教材クリエイター・脚本・演出家。20年にわたる全国数百の学習塾での指導経験を生かして、学校、またインド、ベトナム、シンガポール等で続々と導入されている「玉井式 国語的算数教室®」「玉井式 図形の極®」など、パソコン・タブレットを使用して学習する教材を全国展開。2021年現在、日本全国で24,000人が学習しており、有名私立小学校・大手学習塾・幼稚園・保育園及び学童などで広く活用されている。また、インド著書には「世界に出ても負けない子に育てる」(青春出版社)他。国内外での年間講演回数は120回(2018年度)を超える。洛南高等学校附属小学校で「玉井式 図形の極®」が授業カリキュラムとして取り組まれている。また、2021年度より、奈良育英小学校(現 奈良育英グローバル小学校)の副校長に就任。
>> TAMAISHIKIオフィシャルサイト
>> 奈良育英グローバル小学校
– 編集部 −
第14回目のメインテーマはこれからの日本の「グローバル社会」について。
日本は先進国の中でも少子高齢化が進む中、経済的にも伸び悩むことが予想されています。
それがどういう社会になるということなのか、玉井先生の考えを教えてもらいました。
日本のグローバル化とは
積極的なグローバル化というよりも、否応無しに世界に巻き込まれていくということになります。日本は鎖国しているわけではないので、日本人だけの世界で生きていくというのはもう難しいと思います。就職した会社が外資系に買い取られるということもあるでしょうし、就職してみたら取締役がみんな外国人だったなど、そういったことは今後たくさん起こると想定されます。普通にグローバル社会へ巻き込まれていくのではないでしょうか。
さらには、日本もどんどん外に出ていかないと食べていけなくなるように思います。日本国民の99%が生まれてから死ぬまで国内だけで生活できたという、とても稀な国なのです。どういうことかというと、国によってはいくら頑張って勉強しても、母国以外の国に行かないと、人口が多すぎて仕事が無いこともありますし、逆に知識を生かすために他の国へ行くということが往々にしてあります。インドでも10歳の子の半数が「他の国に行きます」と手を挙げます。それは、インド国内に今のところ十分にお給料をもらえる仕事が少ないこともありますが、英語もできて知識があればアメリカやドイツへ行こうといった考えがスタンダードなんですね。
私たち日本人で言えば、地方の人が東京へ出るという感覚が、世界では勉強したら外の国へ出るという感覚が普通なんです。戦後、私たちはたまたま先進国として国内需要で賄うことができ、一部の企業だけが海外進出して稼ぐという構図で、国民全員が国外へ出稼ぎに行かなくてすみました。日本でも戦前はブラジルへ出稼ぎに行ったり、国内では仕事が十分でなかったり色々あったのですが、今のような内需で賄える幸せな時代ももう過ぎ去ろうとしています。日本はまた他の国に出て働くという時代が、ジワジワと迫ってきています。また最近では、多くの研究費や報酬をもらえるため、次のノーベル賞候補の日本人が他国の大学に引き抜かれるといったニュースがありましたが、このように日本の知識や期待されている人がどんどんお金を出してくれる国へ行くことになるでしょう。
今までは日本がその立場でしたが、これからは日本の優秀な人材が他国に引き抜かれていきます。日本の大学の研究費はとても少ないですし、海外では優秀な人材なら新卒採用でも「1000万円以上」という報酬提示も当たり前にあるので、当然そちらに行きますよね。日本は何らかの施策を講じてそこを是正しないと、優秀な頭脳からまず外国に行くのと、日本で就職先が無い人が外国へ行くという極端な分かれ方をすると思います。
今までの日本はみんな同じ教育を受けられたので、そこまで極端なことが無かったのですが、今後はとても差が開いていくのだろうなと思います。
日本のこれからのイメージとは
今までの日本でしたら、世界中が欲しいといって憧れてくれた製品を出せてきました。それによってある程度、国が潤ってきたのだと思います。今は、世界中の人が「これ欲しいな」という商品やサービスが日本からどれほど出ているのでしょう。本来、日本人にはもっとできることがたくさんあると思っています。今までの経験値、その頭脳によって発展できる素地があるのに、まだまだ活用しきれていないのが、もったいない気がしています。
雇用の状況でいうと、今までのように終身雇用が当たり前ではなくなってきています。あのTOYOTAでさえ「終身雇用は無理です」と言っているのですから。
そうして、親一人の給料では、子どもを大学へ入れられないということになり、共働き世帯が増えています。しかし、保育所が整備されたとしても、働きながらの育児・家事は大変ということで、じゃあもう食事は日常的に外で食べられるようにしましょうとなるのではないでしょうか。みんなちょっと早く起きて、朝から子どもを連れて外でご飯を食べてから保育所に連れて行く。男女とも頑張って働き、晩御飯も外で済ませ、また明日も頑張ろうといった感じです。すでにこのように男女とも当たり前に同じように働いている国もあって、日本もこのように変化していくかもしれません。夫が働き妻は専業主婦をすることが悪いわけではありません。ただ、その選択肢が無くなっていく可能性があるのではないでしょうか。
どういう社会になろうと、私は成功哲学など持っていません。成功哲学で自分を縛っていく必要はないと思っています。成功の形は一人ひとり違うわけですから。さらに言うと、「夢を持て」というのも場合によりけりだと思っています。「夢がないと悪いんですか?」と思ったりもします。私自身も夢はあったかな?と。
人として生まれたからには何か強みを持っていて、自分から湧き出てくるものがあると思います。その時期は人によって違うもの。それによって、自分と、プラスアルファ周りの人が幸せになれば良いと思うのです。
いろんな文化や価値観の人と
何かをするために大切なこと
まず、成功の定義の価値観を押し付けないことが、とても大事なことだと思います。「あの人はお金持ちだから良い」とか「あの人は成績が高いから良い」などの成功の定義というのを押し付けないことが、まず一つの価値観だと思っています。一人ひとり、「いつか絶対これがやりたいんだ」とか「こうして良かった」と思うことがあるでしょうから。「私には何にも無い」とか「私には取り柄が無い」とか「私は平凡だ」と思わず、人と比べてしまうことをしすぎないようにしてほしいと思います。
とはいえ、日本の学校制度の中で、人と比べられながら生きている子どもたちにとって、「人と比べなくていい」というのは、矛盾している話です。それは、子どもがどんどんできていることがいっぱいあるのに、それに目を向けず「こっちをしなさい!」としてしまう教育に問題があると思います。
ですので、奈良育英小学校では、「人と比べなくて良い」という定義を保護者にも子ども本人たちにも伝えています。本当に心配しなくて良いのです。なぜなら、子どもたちは必ず一人ひとり強みを持っているからです。
一般論的に「海外に出るにはどうしたら良いですか」と言われると、答えに窮するものですが、私もインドなどいろんな国に何十回も行きながら、自分で体得してきたことがあります。いつかは自分で外に行ける力やそのメンタルが必要だと思います。「ちょっと興味あるから行ってみようかな」、携帯とクレジットカードさえあったら、「ちょっと行ってくる!」と、そんな感じで動けるように育ててあげたいと思います。親御さんによっては、東京へ行かせるだけでもハードルが高いようなのですが、実際は2時間もあれば行ける時代ですよね。今でしたらスマートフォンで予約してすぐ行けますよね。普通にどこかへ行くということがないと、これからの子どもたちは大変だと思います。
世界の広さや多様性をどのように伝えるのかというと、知らないと伝えられないことが山ほどあります。子どもが行きたいところがあれば、その世界を知っている人から話を聞いてみるのもいいかもしれません。行ったことがない、行きたい国があれば、実際に行ったことがある人と話をして、そこで「物価はいくらくらいなの?」「医者は日本語が通じるの?」など、何でも良いので聞いてみて「それなら、○○へ行ってみたいな」から始まっても良いと思います。
親の情報の取り方、視野の広げ方
普通の子育て世帯向けの情報だと習い事やグルメ、学校情報、おもちゃ、お出かけのおすすめなどの情報が多いですよね。悪いわけではないですし必要な情報ですが、今や情報はどこでも色んなところから取れるのです。情報を取りにいく範囲が狭いと、目の前のことだけにフォーカスしてしまいます。しかし、それは仕方のないことで、視野が狭いのではなく、親はその専門職みたいなものですので、しばらくはそういった部分で子育てを頑張らないといけない時期があるでしょう。ですので、どうしてもそういう身近な情報ばかりを見てしまうものです。
一度、こんなことを子どもに自慢しようという遊びをしてみてください。「世界で最強の生物は何でしょう」「答えはクマムシ」などです。宇宙に出ても死なない生態がある、マイナス何十度でも死なないなど、そういう子どもに自慢できるような情報を仕入れてクイズにする。「インドのタージマハルはお城かお墓かどちらでしょう」「答えはお墓」。「お母さんこんなこと知っているよ」と、自分でいろんなことを知って、クイズで出したら良いのではないと思います。どうやったら世界を教えられるかというと、親自身が自分で世界の情報を取りにいくしかないと思います。
次回の「Vol.15」は10月15日(金)にお届けします。お楽しみに!
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