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特集

【奈良育英グローバル小学校の目標】– Vol.48 – 教育環境のあり方と「STEAM」教育

2022年6月24日

【奈良育英グローバル小学校の目標】– Vol.48 – 教育環境のあり方と「STEAM」教育

これからの子どもたちは、これまでよりも世界に目を向けなければいけない時代を生きることになります。今のままの教育で良いのか、変わっていかなければいけない点は何なのか。グローバル時代を生きる子どもたちの成長のために、どのような価値観が必要なのでしょうか。
何のために教育するのかという、教育の価値観をしっかり持って、「親が笑顔でいること」「子どもへ何よりも愛していると伝えること」そして、「花(成果)を咲かせることだけでなく、丈夫な根っこ(土台)を育ててあげること」を大事にする。そう言うのは、「世界に負けない子に育てる」教育を提唱し、独自の能力育成教材を開発し続けてきた玉井満代先生。

玉井先生の考える子育てと教育について、48回にわたり、さまざまな視点でお届けします。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

《教えてくれたのは》
(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ
代表取締役 玉井満代さん

京都市生まれ、ICT教材クリエイター・脚本・演出家。20年にわたる全国数百の学習塾での指導経験を生かして、学校、またインド、ベトナム、シンガポール等で続々と導入されている「玉井式 国語的算数教室®」「玉井式 図形の極®」など、パソコン・タブレットを使用して学習する教材を全国展開。2021年現在、日本全国で24,000人が学習しており、有名私立小学校・大手学習塾・幼稚園・保育園及び学童などで広く活用されている。また、インド著書には「世界に出ても負けない子に育てる」(青春出版社)他。国内外での年間講演回数は120回(2018年度)を超える。洛南高等学校附属小学校で「玉井式 図形の極®」が授業カリキュラムとして取り組まれている。また、2021年度より、奈良育英グローバル小学校の副校長に就任。

>> TAMAISHIKIオフィシャルサイト
>> 奈良育英グローバル小学校

 

– 編集部 −
玉井先生の教育コラム最終回です。
第48回目のテーマは、教育環境のあり方とそれにも関わってくる「STEAM教育」。科学・技術・工学・芸術・数学を意味する5つの分野で、探求や創造を育む学びのこと。
奈良育英グローバル小学校では、どのような環境で取り入れられているのかを教えてもらいました。

子どもたちのための
“良い教育環境”とは

教育者はキャリアに関わらず、まずは人として子どもたちを魅きつける力が必要です。
例えば、漢字のトメハネをきっちり見ることができる先生でも、子どもたちのために楽しくて面白くてワクワクする授業ができるかというと、必ずしもそうではないかもしれません。ところが親御さんも、「漢字のトメハネをしっかり見てもらっている」といったことに重きをおいて、先生の評価をしてしまう場面もあるかもしれないですよね。

漢字のトメハネについて言うと、現在では文部科学省もこだわらなくて良いとしており、親御さんが習ってきた方法や考え方とは変わってきていることもあります。
奈良育英グローバル小学校でも、保護者の方が習ってきた形ではない学習もあることを説明することを大切に考え、最初にかなりご説明もさせていただくので、しっかりご理解いただいた上で、入学してくださっていると実感しています。
良い教育環境とは、シンプルに言って、子どもたちが毎日ワクワクしながら通える学校のことだと考えています。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

子どもたちを取り巻く環境として、近代的な設備が整ったところで勉強できることはもちろん良いのですが、それよりも誰に出会うか、どんな先生からどんな言葉をかけてもらうかといったことのほうが、今後の人生に残っていくと思うんです。先生にこんなことを言ってもらった、こう教えてもらった、先生のあの言葉が心に残っているというエピソードは誰しも持っていると思います。ですので、私たち教育者は、日々子どもたちに、何をどう伝えていくかを真剣に考えなければいけません

奈良育英グローバル小学校の受験を検討されている親御さんが集まった日に、在校生が司会をしてくれたんですが、私の挨拶前に「今、この小学校で、一番頼りになる玉井副校長先生の挨拶です」と言ってくれたんです。その一言が嬉しすぎて、肝心な挨拶が話せなくなってしまいました。
学校へ行くと、いろいろな学年の子どもたちが寄ってきてくれて、自分の作ったものを見せにきてくれます。そんな子どもたちに接すると、私もまた頑張ろうという気持ちになれます。
子どもたちから与えられるものがいっぱいあるはずの教師という職業に、近年なり手が少ないのは残念なことだと思います。それを改善するためにも、先生の働き方を改革すべきだと思います。先生自身が疲弊していたら、子どもたちのためにもならないのですから。

先生の中には、土日も休めず、朝7時位から学校に来て、夜は19時までいらっしゃる方もあります。そんな毎日が続くと大変ですよね。奈良育英グローバル小学校では、そういった働き方を改革していこうと考えています。役割を明確にすることで、先生を助けられる部分もあります。
例えば、先生がテストの採点を家に持って帰ってすると言うのですが、採点する役割は別の人が担当すれば良いと思うんです。教師でなくてもできることです。採点された答案用紙を後で先生がちゃんと見て、どこが間違っているかが分かれば良いだけです。また、理科の実験の準備といった雑務を担ってくれる人がいれば、先生の負担を減らすことができます。
奈良育英グローバル小学校では、アシスタントデスクというスタッフがいます。先生をアシストする人が、一人二人いるだけで、先生は本来すべき仕事に注力できると思います。

また、担任の先生だけが責任を取るといったことにならないことが大切です。奈良育英グローバル小学校は全体で情報を共有しながら、先生が困っていることがあれば、誰かが一緒に助けていくようにしています。先生も人間です。細かいことでも困っていることが山のようにあれば、すべて対応できるわけがありません。そういった先生の悩みを早い段階から学校として把握していくようにしています。

教師というのは、失敗もちろんあるんですが、それ以上に喜びの多い職業だと思います。それを実感できる先生が増えれば、何より子どもたちのためになると思います。

自分の「好き」を見つけ、
伝えるための教育

奈良育英グローバル小学校では、子どもたちの自己肯定感を上げながら教えていくことを目標としていますが、その取り組みとして前回お伝えした「トランスリンガル」の他に、もう一つ「STEAM教育」があります。
STEAM教育とは、「Science(科学)」「Technology(技術)」「Engineering(工学)」「Arts(芸術)」「Mathematics(数学)」の頭文字をとった言葉です。

STEAMのうち、例えば「Arts(芸術)」などは、葉っぱから色を取ったり、紙に葉っぱを貼ってみたり、学校の身近にある畑や川など自然と触れ合いながら芸術的なことを学んでいます。絵も自由に描かせています。こう描いたらコンクールに入賞するとかではなく、自由に描いて表現する楽しさを知って欲しい。また、音楽でも、金管楽器によるブラスバンドに力を入れています。この延長で美術の道に進む子もいれば、音楽の道に進む子もいたり、また別の道に進む子もいたりして良い取り組みだと思っています。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

「Science(科学)」でいえば、学校の周辺には生き物がいっぱいいて、子どもたちはさまざまな生き物を捕まえてきます。
先日、子どもたちが見つけたあるオタマジャクシの映像を見せてもらいました。そのオタマジャクシが葉っぱを食べている途中で転んでしまい、可愛いくて笑える映像だったのですが、子どもたちは「この動き、可愛いけど何をしているの?」から始まり、「このオタマジャクシ、大丈夫なの?」と、どんどん想像を膨らましていきました。
オタマジャクシというのは、前足と後ろ足を生やして何日間かかけてカエルになります、といった決まりきったことを教えるばかりでなく、謎を楽しんだり、カエルになっていく過程をもっと具体的に知りたくなったり、カエルの種類などに好奇心が湧いたりして自分で調べるようになるなど、自然と遊びながら自らサイエンスを学んでいくことを大切にしています。

「Technology(技術)」の分野でも、プログラミングなど分かりやすいカリキュラムを取り入れていますが、私はシステマティックなカリキュラム自体をSTEAM教育だとは思っていません。
小学生時代におけるSTEAM教育というのは、「STEAMのどれがあなたは好き?」といったことを探していく段階だと思います。決めつける必要はありませんが、いつか自分の専門性を見つけられるようになるための土台づくりです。そのためにも、ワクワクしながら学べることが大切だと思います。

STEAMの5つの分野に限りませんが、「自分はこれが好きだ」というのを将来見つけられるように、そして自分で専門的な方向を選択していけるようにすることが、本来のSTEAM教育の基礎だと考えています。
STEAM教育を通して、一人ひとりの個性が出てくると思うんです。子どもたちには、自分に合った世界を見つけ出して欲しいなという思いがあります。

子どもの発想力や発見力を見くびってはいけないと思います。学校教育の中で、自由に探求させていきたいと考えていますが、奈良育英グローバル小学校の先生方はそれが上手だなと感じます。
ある日、家で採れたからと冬瓜(とうがん)を持ってきた子がいたのですが、その冬瓜を先生が家で炊いてきてくれたんです。最初は冬瓜を見て触って感じて、今度は味を体験する。子どもたちは「おいしい!」と感動するわけです。先生はこのように料理までしてきてくれます。本当に幸せで良い学校だなと思います。

子どもたちからのアウトプットもSTEAM教育の醍醐味だと思っていて、私たちの学校では、決まったこと、知っていること、覚えたことを述べるだけではなく、プレゼンテーションなど自分の意見を発表する場をとても大切にしています。題材は、それこそ虫だったり、葉っぱだったり、オタマジャクシだったり、あるいは絵の具だったり、アコーディオンだったりします。絵も音楽も表現ですし、プレゼンテーションも表現のひとつです。先生から受け身で学ぶよりも、子どもたち自身が関心のある物事を題材にして表現する時間、アウトプットする時間を大切にしているのが、奈良育英グローバル小学校のSTEAM教育の特長かなと思っています。

 

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