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【玉井式子育て教室I】- Vol.05 – 進化し続ける世界の教育と日本の現状とは?

2021年8月6日

【玉井式子育て教室I】- Vol.05 - 進化し続ける世界の教育と日本の現状とは?

これからの子どもたちは、これまでよりも世界に目を向けなければいけない時代を生きることになります。今のままの教育で良いのか、変わっていかなければいけない点は何なのか。グローバル時代を生きる子どもたちの成長のために、どのような価値観が必要なのでしょうか。
何のために教育するのかという、教育の価値観をしっかり持って、「親が笑顔でいること」「子どもへ何よりも愛していると伝えること」そして、「花(成果)を咲かせることだけでなく、丈夫な根っこ(土台)を育ててあげること」を大事にする。そう言うのは、「世界に負けない子に育てる」教育を提唱し、独自の能力育成教材を開発し続けてきた玉井満代先生。

玉井先生の考える子育てと教育について、48回にわたり、さまざまな視点でお届けします。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

《教えてくれたのは》
(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ
代表取締役 玉井満代さん

京都市生まれ、ICT教材クリエイター・脚本・演出家。20年にわたる全国数百の学習塾での指導経験を生かして、学校、またインド、ベトナム、シンガポール等で続々と導入されている「玉井式 国語的算数教室®」「玉井式 図形の極®」など、パソコン・タブレットを使用して学習する教材を全国展開。2021年現在、日本全国で24,000人が学習しており、有名私立小学校・大手学習塾・幼稚園・保育園及び学童などで広く活用されている。また、インド著書には「世界に出ても負けない子に育てる」(青春出版社)他。国内外での年間講演回数は120回(2018年度)を超える。洛南高等学校附属小学校で「玉井式 図形の極®」が授業カリキュラムとして取り組まれている。また、2021年度より、奈良育英小学校の副校長に就任。

>> TAMAISHIKIオフィシャルサイト
>> 奈良育英小学校

 

– 編集部 −
第5回目のメインテーマは「これからの日本を知る」「世界から見た日本の教育」。
子どもを教育するにあたって、子どもが生きていくこれからの日本の社会について、世界における日本は今どうなっているかを知り、未来志向で教育することが、子どものためになるのではないでしょうか。
親としてどのような視点や知識を持つようにすれば良いのかを玉井先生にお伺いしました。

教育の価値観をアップデートしていくためには

いつも講演会などで、日本の人口激減やこれからの状況についてお話しています。
日本の人口は2010年をピークに減り続けています。2010年に生まれた子どもが50歳になる2060年の状況を考えてみましょう。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

2060年になると、日本人は約8,600万人、そのうち4割は65歳以上となります。今の子どもたちが40〜50代になるときで、ちょうど子育てと働き盛りの世代です。しかし、人口が減り、全人口の半分しか働いていないという状況。もし、今の子どもたちが90歳まで生きたら、2100年まで生きる。日本人が5,000万人を切っている社会を想像できますか?

私は1962年生まれですが、人口が増加していき、働く人が多くなっていく流れの中で教育されています。働く人口が多いと、その中の0.1%でも天才がいれば、国の発展の一端を担ってくれます。例えば、松下幸之助さんや本田宗一郎さんといった起業家や何かを発明する人、科学者など。しかし、ほんの一握りのその人たちだけで企業や国が発展させられるわけではなく、その発明や改革を発展させようとする人材が周りに必要なんです。いわゆる学力があって優秀な人。つまり、人口増加の時代は、発明家、改革者の横に、それをグローバルに広げていく平均的に優秀な人が多数必要だという教育だったんです。
しかし、人口増加の時代と、明らかに人口が減っていく時代の教育では、考え方を変えないと、日本の国力が駄目になっていく。20年間も給料が変わらないようなこの国で、みなさんのお子さんは生き抜いていく。そのための教育が、いまだに自己肯定感を低くするような教育で良いと思いますか?という話を講演会でしています。

人口増加の時代だと、国内の良い大学を目指せば、大きい企業がいっぱいあるのでそこに入れば、もう定年まで安泰という将来に繋がっていましたが、今はもう無理なんです。あのトヨタが無理と言っているので無理なんですよ。

じゃあ、無理だったら何をもって生きるかというと、自分しかないんです。学歴や肩書きとかではなくて、自分自身がどういう力や強みを持っているかに気づき、それを培っていくしかないんです。自分が何のためにこの大学に入って、何を学んでいきたいか、そして自分は何をやりたいかというしっかりとした指針を持って、大学に入ったり、やりたいことができる場所を見つけること。そこから出たときに、企業や社会に対して自信をもってアプローチができ、「世界のどこにだって行けます」といったメンタルの強さと表現力を持たせて社会に出さないといけません

平成元年(30年前)の世界のトップ企業の50社中、32社は日本の企業でした。しかし、令和元年ではトヨタ1社しかありません。この30年間で、GoogleやAmazon、Facebook、Apple(GAFA)など、今まで無かった他国の新しい企業にあっという間に抜かれました。また、今やアジアのエリートも日本へは来ません。フィリピンで英語が話せて大学を出たら、アメリカで働いたほうが日本よりずっと高いお給料をもらえるんですから。30年間の賃金の推移を世界で比較してみると、日本だけ一人負けしているデフレの状態。「じゃあ賃金の安い国だから、物価も安くて良いじゃないですか」という人もいますが、賃金が上がっている世界の人たちが、安い日本の不動産を買いに来るんです。日本は法律で取り締まるわけではないので、外国人にどんどん買われていったとしたら、どうなるでしょうか。
今の子どもたちの未来にも、日本がちゃんと独立国であるためにはどうすれば良いのか、考えてみてください。そのためにも、子どもと関わる大人一人ひとりが、日本のことだけで考えず、世界の状況も知り、教育の価値観をアップデートしていくことが大切ではないでしょうか。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

世界といっても一括りにはできませんが、日本は世界からまだまだリスペクトされている国だと思います。だからこそ、今からでも、私の子どもたちが50年も60年も70年も生きていくことを念頭に教育しなければなりません。小さなチマチマしたことに悩んでいる暇はないということが、私の正直な思いです。

 

日本は衰退途上国?!

ひと昔前までは、ソニーやホンダ、パナソニックといった日本を代表する名前で、最先端の技術を持っているというイメージが浸透していましたが、今はそれほどではありません。5年ほど前、インドに行ったときは、最先端をいく国というイメージは、アメリカのGAFAに入れ替わりました。自動車も電気自動車のテスラが主流になると、今までガソリン車で作ってきた部品などが不要となり、エンジンを変えないでコンピュータソフトだけで、どんどん発展させるという方向に進んでいる。そうすると、日本人の未来の雇用はどうなるのか、世界の人たちと対等に渡り合っていけるのかという話になると思います。
かつては、多くの人がとりあえず、日本の大学を卒業して、良い会社に入ったら、結婚して家も建てられて、定年という時代がありましたよね。つい最近までそういう意識が強く、まだその路線でも大丈夫だと思っている人も多いのではないかと思うのですが、それは現実を直視できていないように感じます。経済的にも、世界の企業TOP50の結果にしても、いろんな面で“衰退途上国”と揶揄されているような場面がいっぱいあるんです。とても悔しいことです。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

世界は日本をどう見ているかというと、今までのことがあるのですごく尊敬はしてくれている一方、私の感触では、心配されているようにも感じます。「あなたのところ人口も減っていって、英語が話せない人が多いですよね」と。今までの日本だと、テクノロジーが最先端だったので心配はされていませんでしたが、海外の外資系企業に株が買われていっている中、新日派の人ほど心配しているところがあると思います。だからリスペクトされていないわけではないですが、心配もされているということをしばしば感じます。

世界からみた日本の教育とは

日本の教育が優れている点は、6歳になったら全員に教科書が配られて、学校に通えると言うところ。それは世界でも類がないほどで、今でこそシンガポールなどの人口が少ない国ではできていますが、日本は一億人以上いても戸籍がしっかりあり、全ての子どもたちに教育の機会が与えられています

移民の多い国やインドなどは、学校に行けない子どもたちのほうが多く、世界中でそういうことになっている国や地域があります。でも日本だと、みんな6歳になったらどこに住んでいても学校に通えます。なぜ学校に通えるのかというと、税金で建物が建っていて、先生を雇えているんですよね。アメリカやインドだと、公立の教師のお給料はものすごく低いんです。私が知っている限り、日本以外の国の先生はチーパー(給料が安い労働者)なので、タイなどでも他のバイトが認められています。バイトが認められているから、放課後に塾を開講して月謝を取ります。それだけ教育に税収をかけられていない国が多いんです。日本ではどんな過疎地で子どもが少なくても、ちゃんと先生が見てくれます。それはとっても良いことで、だからこそ国民全体の平均学力は世界と比べても上位にある。世界中の子どもの中で、国としての学力平均は高いはず。ですので、平均を上げたという点では、今までの教育が功を奏しています。いまだに高校入学の時に、5科目平均や9科目平均評定で4.5以上だと進学校へ、といった目安が残っていますよね。どの科目も押し並べてできる子が学力の高い学校に入れる、というのが日本の教育なんです。数国英理社どれもができていることを求める教育になっています。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

 

平均で良い点を取る日本教育の弊害

全体の平均は上がっていくのですが、数学は5だけれど社会は2といったように、極端にできる子への教育がすごく遅れています。平均的に押し並べてできることが今までの強みだったかもしれないけれど、今後は決して強みになっていかないんじゃないかと思っています。

単純作業の仕事であっても、みんな大学を出ていて学歴があるということが日本は多いのです。中卒と言っても、中学校の教育内容も高度で、ちゃんとしたレベルの教育を全国民が受ける権利を持っています。しかし、何かに特化したものを活かしていくことが弱い。また、何よりも弱かったのが、偏差値という基準でずっと進学を考えてきたために、大学へいくときに大学名で選ぶような文化になってしまった。何を学びたいからこの大学のこの学部へ行きたいという志ではなく、有名な大学へ行きたい、そこが無理ならその次の大学といった選択になる。大学は学部が一緒でも、先生や勉強していることが全然違うんですよ。そこまで調べないで進路を決めてしまうので、入った後のミスマッチ感というか、自分が一体何がやりたくて、この大学のこの学部へ来たのかという疑問が出てきます。お医者さんなど専門課程は別かもしれませんが、文系か理系かといった形だけで選ぶと、何を学びたいのかは考えないで、「どこに行けるかな、私の偏差値で」という発想になってしまいます。
合格判定でいけそうな学校を探すのではなく「あなたが何を学びたいか」という視点がすごく遅れているので、大学に入ったとたん、とりあえずレポートだけ出して試験のときだけ勉強してとなる人もいる。海外からきた留学生が、「なんで日本の大学生はこんなに勉強しないんだろう?」とビックリするほどです。例えばアジア圏からお金を払って日本の大学に来るような人たちは、学んで国に帰って社会に貢献したいという強い気持ちで来るので、必死で勉強します。しかし日本だと、こうしたいから高等教育を受けようという意識がとても薄い。さらにそれを探し始めるのも遅い。下手をしたら大学へ入ってから考える。もっと10代の早い段階から考えさせるような、例えば飛び級制度も入れてもいいし、何年か世界を周ってきましたといった、一人ひとりの進み方が認められて良いと思います。学校ももっと気軽に入り直せたり、就職が年齢で不利にならなかったり、そういう日本全体の慣習、文化を変えていかないといけないと思います。
私の考えですが、例えば企業の文化から変えるとすると、まず採用方法として、「あなたは何のために何を学んできて、その学びをこの企業でどう生かし、何を実現したいか」なんていう質問が飛ぶ面接にする。採用の価値観が変われば、教育の価値観も変わる。一回海外でビジネスをしたり、志をもって海外の大学にチャレンジしたり、ボランティア活動や社会経験を経てから大学へ戻ったり、起業したり、そういった自由さが欲しいと思います。

これからは一人ひとりの
とんがりを引き出す教育を

我々もそうであるように、他国の教科書の作り方とかまではわからないですよね。どの国も自国のカリキュラムがあり、教育指針があります。国によって教育は違い、言葉の壁もあるため、世界が他国の教育をどう見るかというと、結局、過程ではなく出口を見るんです。優秀な企業が現れると、そこで働く人たちがどういう教育をされてきたかが気になってくると思います。また、OECD加盟国で世界中の15歳が3年に1回、テストを受けるPISAの調査があります。こういった試験や日本の企業がトップにいれば、この国はどのような教育をしているのかと興味を持ってもらえるかもしれません。しかし残念なことに、今はそうなってはいません。

日本人は優秀で真面目というイメージがあり、それは国民の平均学力や能力は高いから。しかし、とんがったことができているとはあまり思われていないように感じます。子どもが多い時代だと、いくら平均的な教育をしても誰か天才は出てくるものです。学校へ行かなくても天才は出てくる。天才が生み出したものを、平均学力の高い秀才が横展開し、多くの労働力で国力を培っていけました。人口が減っていく今、このままずっと同じ平均的な教育が続いていくと、ひょっとしたら一握りの天才の子も生かしきれない状態になります。これからは、一人ひとりの強みや能力を見出し、そのとんがりを引き出していく教育が必要ではないでしょうか。それによって、新しい時代に、とんがった発想で、新しい産業が日本から生み出されて欲しいと思います。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

 

世界の日本の立ち位置を考えた教育を

さらにいえば、全てが学校という形でなくても良いと思います。何よりも変えなければいけないのは、学校の評価基準。それがあるが故に、お母さんやお父さんが苦しめられる。親が焦ってあれもこれもやらせなきゃ、成績が悪いと困るってことになってしまいます。学校の成績のつけ方を変えて、そんな親御さんを焦りから解放してあげたほうが良いですよね。

学校へ入るより出るほうが難しくなるよう、仕組みを変えたほうが良いと思っています。学校へ入るときが難しいから、そこまでは一生懸命勉強して、入学できたら出席だけちゃんとして単位を取り、とりあえず卒業といった仕組みはやめたほうが良いと思っています。

日本の教育は変えどころ満載です。人口増加の時代、日本は世界での立ち位置が良かった。だから、立ち位置の良い日本の良い大学へ入ったら世界中に通用するという時代でした。しかし世界での立ち位置が落ちていくと、その国の良い大学へ入っても、それが本当に世界で通用するのかということになります。東京大学ですら、今は世界のエリートからすると滑り止めになっています。国力が下がると、その中のトップの大学でも相対的に立ち位置が下がります。
親御さんたちには、世界全体を見た上で、ぜひ自分のお子さんをどう育てるか考えてほしいと思います。なかなか日本の教育はドラスティックには変わりませんからね…。

 

次回の「Vol.06」は8月13日(金)にお届けします。お楽しみに!

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