特集

【玉井式子育て教室II】– Vol.08 – 発展して考えられる力「数学的思考力」とは

2021年8月27日

【玉井式子育て教室II】– Vol.08 – 発展して考えられる力「数学的思考力」とは

これからの子どもたちは、これまでよりも世界に目を向けなければいけない時代を生きることになります。今のままの教育で良いのか、変わっていかなければいけない点は何なのか。グローバル時代を生きる子どもたちの成長のために、どのような価値観が必要なのでしょうか。
何のために教育するのかという、教育の価値観をしっかり持って、「親が笑顔でいること」「子どもへ何よりも愛していると伝えること」そして、「花(成果)を咲かせることだけでなく、丈夫な根っこ(土台)を育ててあげること」を大事にする。そう言うのは、「世界に負けない子に育てる」教育を提唱し、独自の能力育成教材を開発し続けてきた玉井満代先生。

玉井先生の考える子育てと教育について、48回にわたり、さまざまな視点でお届けします。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

《教えてくれたのは》
(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ
代表取締役 玉井満代さん

京都市生まれ、ICT教材クリエイター・脚本・演出家。20年にわたる全国数百の学習塾での指導経験を生かして、学校、またインド、ベトナム、シンガポール等で続々と導入されている「玉井式 国語的算数教室®」「玉井式 図形の極®」など、パソコン・タブレットを使用して学習する教材を全国展開。2021年現在、日本全国で24,000人が学習しており、有名私立小学校・大手学習塾・幼稚園・保育園及び学童などで広く活用されている。また、インド著書には「世界に出ても負けない子に育てる」(青春出版社)他。国内外での年間講演回数は120回(2018年度)を超える。洛南高等学校附属小学校で「玉井式 図形の極®」が授業カリキュラムとして取り組まれている。また、2021年度より、奈良育英小学校の副校長に就任。

>> TAMAISHIKIオフィシャルサイト
>> 奈良育英小学校

 

– 編集部 −
第8回目のメインテーマは「数学的思考力」。
数学とは誰が解いても一つの答えのはず。しかし、物事を発展させていくには、答えを解くだけではなく想像力でさらに広げる力が必要で、それが本来の「数学的思考力」だという玉井先生。
新しいことに「気づく」ことで仮定し、それを深掘りしていくような思考力がつくには、どのような体験や親の働きかけがいるのかを、玉井先生にお伺いしました。

数学的思考力とは

中学生で勉強する証明問題を思い浮かべてみてください。ある仮定や条件が提示されて、結論が正しいこと証明する問題です。公式を覚えて解くのではなく、仮定(if)から根拠を導き出すため、考え方によってはいくつにも分岐するものです。証明問題で一つの根拠を引き出したとしても、何かちょっと違うと、全然違う結果に結びついていきます。
数学的思考力というのは、このようにいくつにも分岐する問題であっても、きちんと組み立てられる力だと思います。条件が複数あったとしても、それを自分で考えて組み合わせ、ゴールに持っていく力。一般的に数学というと答えは一つなのですが、その答えに向けてロジックを組み立てていくのが証明問題なんです。答えまたは結果はこうです、仮定はこうです、なぜそうなったのか根拠を証明しなさいというのが証明問題で、それも一つの数学的思考力です。つまり、なぜそうなるかを考えられる力です。

何か一つのものを見ても感じ方は人それぞれ違います。例えば、絵を見て感じることなどはそれぞれですよね。それに対して数学というのは、誰が見てもどう感じても、同じ答えがあるはずです。しかしそこに、想像力があってこそ、新しい問いが生まれ進歩するものです。
例えば、大昔でいうと数字の「0(ゼロ)」をインドの数学者が発明したことなどです。今は当たり前に0を使っていますが、もともとは「空(くう)」という概念だったようです。これを1〜9と同じ数字に定義したのが0です。これは発明に値するものですよね。このように答えがすでにあるものを、さらに展開して発見していく力が数学的思考力ではないかと思っています。

実は数学の世界には、まだまだ未知のものがあるのではないかと思います。社会のためにつながることが、まだ発見されていないかもしれません。単に公式を覚えて答えを解くだけでなく、このように想像力によって未知のものを導き出す力も含めて、数学的思考力と呼びたいと思っています。

何かを発展させていくための「気づく力」

「気づく力」も重要です。感覚的な話ですが、例えば、最初にナマコを食べた人はすごいと思いませんか?あるいは、毒を持っているフグをきちんと処理して食べられるようになるまで、どれだけの人が試行錯誤してきたのだろうと思いませんか?フグの有毒部分だけを取ったら食べられることを、最初から発見できたわけではないと思うんです。おそらく「おいしい」ことはわかって食べていたところ、亡くなってしまう人が出てくる中で、「死なない食べ方があるのでは?」と誰かが仮定したのだと思うのです。きっと亡くなった人もいれば、死ななかった人もいたのでしょう。そのとき、「あ!肝を食べた人が亡くなったんだ!」と気づいたのかもしれません。そこから、フグの調理技術が発明されたのではないでしょうか。もし、そのときに誰かが「いや、これを食べたら絶対死ぬよ」と言ってそれで終わっていたら、フグの食べ方を発見することもなく、文化は引き継がれなかったかもしれません。

そういった発見には「気づく力」がとても大切です。数学は答えが一つなのですが、実は答えが一つではないのでは?と考えられる人が、いろんなことを発見するのではないかと思います。また、発見にはきっかけも大切。フグでもナマコでも、食べようとする人がいたから気づいたわけです。もっと言うと、味噌なども何がきっかけで発酵することに気づいたんだろうとか、世の中にはいろんな不思議がありますよね。「もしかしたらこうじゃない?」と疑問を持つ人もいれば、「ちょっとやってみよう」と行動に移す人がいて、社会は進化してきたのだと思います。

本当は「1+1=2」と決まっているような公式がある数学の世界でも、まだまだ面白い何かを見つけていけると思います。見つけられていないことがあるから数学者がいるのです。
数学的思考力というと、決まっている答えを解く力というより、人とは違う発想で、同じものではない何かを発見できる力なのではないかと思います。また、目的を決めて成功したとしても、そこで満足しないでどんどん展開していく力でもあると思います。気づく力があると、いろんな仮定が次々と出てくるのではないでしょうか。
このように数学的思考力とは、何かに気づいて仮定し、ロジックを組み立てて証明するのみならず、そこから広がりを持って、また次の発見に結びつける力ではないでしょうか。

 

数学的思考力を育むには
子どもの「好きなものを見つける」

まずは、子どもの好きなものを見つけ出すことです。好きなことでないと集中しないし、掘り下げないと思います。「自分はこれが好きだ」と気づかせる環境が大切。ところが、日本は押し並べてできることを目標にしてしまう部分があり、それはもしかすると、伸びるはずのものを伸ばせなくしている可能性があると思います。子ども本人が自然な探究心を持てる環境も必要ですし、親御さんがそこに気づいてほしいと思います。
例えば「うちの子は虫が好きだな」と気づいたら、「一緒に虫を探しに行って、触ってみよう」と声をかけてあげる。電車が好きだと言ったら「電車に乗りに行こうか」「時刻表を見てみよう」といった具合に、子どもが好きなことや物に気づいたら、周りの大人ができることはいっぱいあります。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

大人が知識を与えようとしすぎて、国旗を100個覚えなさいと言っても、それだけでは発展性がありません。せめて国旗とはその国の目指すものがデザインになっていますので、「どうしてこんな印になっているんだろう」「なぜここにこの印があるのだろう」といった探究心をくすぐる話に持っていくと良いと思います。

子どもの脳みそは、9歳か10歳までには大人と同じ大きさになりますが、まだまだ情報量が入っていない状態です。ですので、子どもにとって単に記憶するというのはとても簡単なことなのです。記憶したことを言わせるというのは、とても楽なことなのです。その反面、この子は読解力があるのか、何に探究心があるのかということは、目に見えない能力開発なのでわかりづらいもの。しかし大切なのは、子どもの興味や探究心を奪わないことです。テストで何点だったとか、検定が何級取れたといったことではなく、子どもがワクワクするものを与え続けていくことが大事だと思います。

一般的にいえば、目に見える力が数学的思考力だと思います。頭の中でどう考えているかを式で書いたり、あるいは言葉で書いたりできるものが一つには数学的ですし、なぜ答えがそうなるのかロジックをしっかり組み立てられることも数学的思考力です。しかし、前述した「0(ゼロ)」を発見した話のように、かつても数学ができる人は山ほどいたのに、0という数字が無かった時代があり、それがある人によって発見されたわけです。つまり、何かを発展させていくためには、やはり想像力や限界を突破する力といった“目に見えない力”が大きく関わるということではないでしょうか。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

好きなものがみつかる時期は
一人ひとり違うもの

例えば、葉っぱの葉脈や貝の柄など自然の中にも実は法則があり、それらに気づいたり、不思議に思ったりすることがあると思います。そのような体験をすることで、子どもたちの想像力も育まれると思いますが、大人が子どもを管理しすぎると、子どもにとっての本当の自由はどこにあるのでしょうか。子どもが自分の個性で何かを見つける時間を大切にしてあげてほしい。一人の時間があったり、ずっと何かを考えていたりしても良いと思います。

奈良育英小学校では、そういうことを考えて、子どもたちから自発的な発信が促されるようなカリキュラムを考えています。例えば、「あなたたちが必要だと思う授業はなんですか?」と聞き、子どもたちでディスカッションさせるようなプログラムがあっても良いと思っています。そうしたら意外と政治のことを学びたいなど、もっとこんなことが知りたいということが子どもたち自身から出てくるのではないかと思います。今は大人がカリキュラムを作ることが普通になっているので、どんなに自由にといっても、子どもたちが学びたいカリキュラムになっているかどうかわかりません。「自由度のある」「自分で考える」といった教育方法も、結局は大人が考えて渡しているんです。全てでなくても、子どもが一体何を考えたいのか、一体何を知りたいのか、そういった子どもの興味を発見するためにも、このような授業があっても良いと思います。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

好きなものをどんどん掘り下げていく子もいますが、興味がいろんなことに移ろいでいく子もいます。例えば、3歳でピアノに夢中になる子がいれば、15歳くらいになってやっと「これが好き」と言い出す子もいるわけです。ですので、「好きなものを見つけよう」といっても焦らなくて良いですし、絶対に興味を見つけないとダメなんだと思わなくても良い話です。「これだ」と思うものを、大きくなったらいつか見つけられるよと伝えてあげれば良いのです。
自己肯定感をそういう点でも下げてしまったらダメですよね。「あの子はピアノを頑張っていて、どんどん上手くなっている、あの子は水泳に興味を持っている、でも私には何も無い」などと思わないように、「心配しなくても、あなたもいつか見つかるから」と言ってあげる。私の塾生にも「やりたいことがわからない」と言う子もたくさんいました。そういうときは「玉井先生なんて50歳になってから、海外に行って見つけたんだよ」と言います。そして、「あなたには何か絶対に強みがあるから、本をたくさん読んでおくと良いよ」と伝えます。好きなものがすぐに見つからなくても、自信を無くす必要は全くありません

親御さんには、子どもの良いところをどんどん伝えてあげてほしいと思います。「あなたはこれもできるし、お手伝いもしてくれるし、すごく良い子じゃない」「妹の面倒を見てくれて、すごく良いお兄ちゃんじゃない。それ以上に何が必要なの」。自分は認められているし、きっと何かが見つかると思っていたら見つかるものです。けれど、否定され続けたり、人と比べられたりすると、余計に自分をダメに思ってしまいます
また、途中でやめてしまったとしても良いと思います。根性論のように「一回やりだしたらやめるな」というのは苦痛ですよね。「あきっぽい」のではなく「好奇心旺盛」だと思うと良いのです。そのうち「これがやりたい」ということが見つかれば良いし、就職してから見つかることもあります。ただ、進学する場合など学校名や偏差値が高いから行くではなくて「何を学びたいから〇〇へ行く」を考えられるようになれば良いと思っています。例え親に反対されても、予備校の偏差値はこちらの学校が高かったとしても、「これを学びたいから〇〇へ行く」という意志を持つことができれば素晴らしいと思います。子どもたちがそんな志を持てるようになるには、まずは周りの大人が考え方を変えていくことが大切なのではないでしょうか。

 

次回の「Vol.09」は9月3日(金)にお届けします。お楽しみに!

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