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特集

【玉井先生が伝えたいこと】– Vol.38 – 小学生までに育みたい自己肯定感

2022年4月8日

【玉井先生が伝えたいこと】– Vol.38 – 小学生までに育みたい自己肯定感

これからの子どもたちは、これまでよりも世界に目を向けなければいけない時代を生きることになります。今のままの教育で良いのか、変わっていかなければいけない点は何なのか。グローバル時代を生きる子どもたちの成長のために、どのような価値観が必要なのでしょうか。
何のために教育するのかという、教育の価値観をしっかり持って、「親が笑顔でいること」「子どもへ何よりも愛していると伝えること」そして、「花(成果)を咲かせることだけでなく、丈夫な根っこ(土台)を育ててあげること」を大事にする。そう言うのは、「世界に負けない子に育てる」教育を提唱し、独自の能力育成教材を開発し続けてきた玉井満代先生。

玉井先生の考える子育てと教育について、48回にわたり、さまざまな視点でお届けします。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

《教えてくれたのは》
(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ
代表取締役 玉井満代さん

京都市生まれ、ICT教材クリエイター・脚本・演出家。20年にわたる全国数百の学習塾での指導経験を生かして、学校、またインド、ベトナム、シンガポール等で続々と導入されている「玉井式 国語的算数教室®」「玉井式 図形の極®」など、パソコン・タブレットを使用して学習する教材を全国展開。2021年現在、日本全国で24,000人が学習しており、有名私立小学校・大手学習塾・幼稚園・保育園及び学童などで広く活用されている。また、インド著書には「世界に出ても負けない子に育てる」(青春出版社)他。国内外での年間講演回数は120回(2018年度)を超える。洛南高等学校附属小学校で「玉井式 図形の極®」が授業カリキュラムとして取り組まれている。また、2021年度より、奈良育英グローバル小学校の副校長に就任。

>> TAMAISHIKIオフィシャルサイト
>> 奈良育英グローバル小学校

 

– 編集部 −
第38回目のテーマは、玉井先生が3月に出版された「小学生までに育みたい自己肯定感 ICT教材クリエーターのエドテック教育の実践」について。
玉井先生がなぜこの本を出版しようと思ったのか、何を伝えたいのかを教えてもらいました。

自分の強みを生かす力を育む

現在の日本の教育はあまりにも詰め込みすぎだと思います。どのような教育であろうと、どんなに素晴らしいメソッドであっても、「子どもの自己肯定感を下げる」ことになってはいけないのです。例えば、間違いばかりを指摘していると、子どもたちは「小さなミスも許されない」というプレッシャーを強く感じるようになるでしょう。一時的に問題が解けたり学力がついたりしても、子どもが自信を無くすような教え方だと、結局はその学力を生かしきれないのではないでしょうか。なぜなら、大きくなった時、それまでに身につけた学力を生かしていくのに必要なのは、「本人の心」を生かせる力だと思うからです。ですので、子どもたちの心の土台をどう育むのかが大切です。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

私たち大人が気をつけなければいけないのは、「今できていること」ばかりにフォーカスしすぎないことです。
偏差値というのはあくまでも相対的なものです。全体の中でどれができているとか、できていないとかばかりを気にしていると、子ども自身が本来持っているはずの強みというものを、本人が見つける自信や機会を持てず、周囲もその子の能力を決めつけてしまいがちです。そうすると、どんなに良い教育を施しても子どもが生かしきれないのではないでしょうか。自分の強みを生かしきれない傾向が顕著に表われているのが、大学を選ぶときに「これを学びたいから、この大学のこの学部に行きたい!」という強い意志を持っている人が少ないことです。偏差値のみを基準に考え、できるだけ有名な大学に入ろうといった慣習が日本には根強くあると思います。

これからはそういう考え方ではなく、自分の強みをどのように社会で生かしたいのかを考え、その道を自分で選ぶために「自分で歩んでいく力」を育むことが大切です。
「相対的に見たら、あなたの学力はこれくらいだから、これくらいの大学へ行くのよ」と言われ続けてきた人が、大学を卒業していきなり、「自分の強みはこれだから、ここでチャレンジする!」とはならないように思います。

 

日本の教育の問題点

私が3月に小学館から出版した「小学生までに育みたい自己肯定感 ICT教材クリエーターのエドテック教育の実践」では、日本の算数教育について疑問を投げかけています。過去に「なぜ、この問題が6年生でこんなにできないんだろう?」ということがありましたが、それは明らかに教え方に問題があって、子どもたちのせいではないのです。この本では、その点にも触れています。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

子どもたちは、どちらかというと受け身で勉強していると思うんです。「2年生ではかけ算をやりましょう」といった決められたカリキュラムがあります。本当はもっとゆっくり進みたい子もいれば、もっと先に進みたい子もいて、一人ひとりの学習ペース、スピードは違うものです。それなのに日本の教育では、先に進みたい子は進めないし、ゆっくりの子は追いつかせようとするから、とても窮屈な思いをしている子がたくさんいるのではないでしょうか。といって、個別に教育を受けさせようとすると、高い教育費がかかってしまいます。

親御さんは子どもへの愛情があるからこそ、がんばらせているのだと思いますが、周りの子と比べすぎたり、細かいミスを指摘しすぎたりしていないでしょうか。そうすると、子どもは心の中で自信をなくしてしまいます。本当はもっとできるはずのことでも、「もっとできる!」と踏み込まず、「もうここまでで良い」と勝手に自分のハードルを下げてしまうこともあります。私から見ると、「あなたはもっとできるのに…」と思っても、子ども自身が自分の限界を決めてしまうんです。要するに、自分のことが見えなくなってしまうのです。自分は何がしたいのか、自分はどういう風に生きていきたいのかを考える機会をずっと後回しにされているため、日本の若者はとても子どもっぽいままで、世界の18歳を対象にした意識調査でも「自分は大人だと思う」という意識が、日本は海外と比べてとても低いのです。

では、日本の子どもが悪いのかといえばそうではありません。大人が「これをやったほうがいい」「この対策をしたほうがいい」などと勝手に決めて、「偏差値はここですね。じゃあ、あなたはこうしたほうがいい」とアドバイスする。そのように大人が子どもの進む道を誘導しすぎて、子ども自身が大人になっていく機会や時間を奪っているように思います。それが日本の教育の問題点です。

この問題点の要素の一つが、カリキュラムや学習の順番だと思っています。本当は公教育において、そこが改善されれば良いと思うのですが、残念ながら日本が公教育にかけているお金はとても少ないので、学校の先生1人が生徒30人以上を教えるとなると、みんなが同じ方向を向いてくれないと難しいと思います。もっと一人ひとりを細かく見てあげたくても、みんなに同じ学習をさせて、決まったラインまで到達させることで精一杯だと思います。教育環境については国がもっと予算を割くべきだと思います。

私は親御さんに課題を提起し、気づきを与えられるようにこの本を書きました。この本を読んで「子どもに言いすぎているかな」とか、「もっと子どもの良いところを見てみよう」、「前よりできることが増えたのに、褒めてあげられてなかったな」と思ってくれる人が一人でも多くいてくれればうれしいです。

 

自分を認め、自信をもって生きるために

私自身も、子どもの頃は自分に自信があったほうではなかったですし、もっと自分を肯定できていたら、もっと早いうちからいろんなことができていたかなと思います。幼い頃から、小さな力を認めてもらえる環境であれば、もう少し違うこともできていたのかなと思ったりもします。

子どもにとって一番身近な大人は親御さんです。いろんなことで子どもを認めてあげると、子どもはきっと伸び伸びと人生を歩んでいけるのではないかなと思います。 人は自分自身をより大きく見せるために、一生懸命勉強したり、有名な大学に行こうとしたり、大手企業に就職したいと思うものですが、小さい頃から「あなたはありのままで十分魅力的で素敵だよ」ということを伝えて、それを本人が自覚すれば、肩書きに関係なく自分の強みを生かした人生を歩めるマインドやメンタリティを持つことができるのではないかと思います。 たとえ、人が羨むような高学歴で人が羨むような企業に入った人でも、自分で選んで自分がしたかったことではなかった場合、葛藤を抱える人もいるのではないでしょうか。人は自信をもって自然体で生きるためには、無条件に愛される時期が必要なんだろうと思います。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

自分が自然体で伸び伸び生きていたら、他の人に対しても寛容でウェルカムな気持ちになれるのではないでしょうか。そういったメンタルの素になるのが自己肯定感だと思います。自分の力で自分らしく生きていれば、他者の存在も認められるんです。 よく親御さんに言うのですが、自分を肯定されたことのない人が、他者を肯定できるわけがないんです。人を否定的・批判的に見る性格ばかりが育ってしまい、結局は自分自身が苦しむんです。ですので、まずは子どもの自己肯定感を大切に育んであげて欲しいと思います。

 

次回の「Vol.39」は4月15日(金)にお届けします。お楽しみに!

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