特集
【玉井式子育て教室II】– Vol.07 – 読んで理解する力「読解力」とは
2021年8月20日
これからの子どもたちは、これまでよりも世界に目を向けなければいけない時代を生きることになります。今のままの教育で良いのか、変わっていかなければいけない点は何なのか。グローバル時代を生きる子どもたちの成長のために、どのような価値観が必要なのでしょうか。
何のために教育するのかという、教育の価値観をしっかり持って、「親が笑顔でいること」「子どもへ何よりも愛していると伝えること」そして、「花(成果)を咲かせることだけでなく、丈夫な根っこ(土台)を育ててあげること」を大事にする。そう言うのは、「世界に負けない子に育てる」教育を提唱し、独自の能力育成教材を開発し続けてきた玉井満代先生。
玉井先生の考える子育てと教育について、48回にわたり、さまざまな視点でお届けします。
《教えてくれたのは》
(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ
代表取締役 玉井満代さん
京都市生まれ、ICT教材クリエイター・脚本・演出家。20年にわたる全国数百の学習塾での指導経験を生かして、学校、またインド、ベトナム、シンガポール等で続々と導入されている「玉井式 国語的算数教室®」「玉井式 図形の極®」など、パソコン・タブレットを使用して学習する教材を全国展開。2021年現在、日本全国で24,000人が学習しており、有名私立小学校・大手学習塾・幼稚園・保育園及び学童などで広く活用されている。また、インド著書には「世界に出ても負けない子に育てる」(青春出版社)他。国内外での年間講演回数は120回(2018年度)を超える。洛南高等学校附属小学校で「玉井式 図形の極®」が授業カリキュラムとして取り組まれている。また、2021年度より、奈良育英小学校(現 奈良育英グローバル小学校)の副校長に就任。
>> TAMAISHIKIオフィシャルサイト
>> 奈良育英グローバル小学校
– 編集部 −
第7回目のメインテーマは「読解力」。
読んで理解する力を育むためには、多読(たくさん読むこと)が必要です。しかし、そのためには、「本を好きになること」がまず大前提。
子どもが本を好きになり、読むようになるためにはどうしたら良いか。親として心がけたい、本の選び方や読み方を玉井先生にお伺いしました。
「読み解く力」を育むには
子どもが面白がる本を。
読解力は読む力というよりは「読み解く力」で、読んで理解する力です。
読むこと自体はひらがな、カタカナ、漢字を習えばできますが、誰がどうして何故なのかといった本に描かれている背景や意図、本質的な意味を理解できるかどうかです。そのためには、言葉の理解以外のいろんな経験が必要になってきます。経験と言葉が脳の中でつながらないと、本に書かれている事象が何を意味しているのかわからないということになってしまいます。
まず読解力を育むために大切なポイントとは、子どもが本を好きになること。それによって多読になること。これは絶対です。そのためには、子ども本人に好きな本を選ばせてあげることです。
私は、読書感想文をもう止めた方が良いとさえ思っています。大人は「本で勉強させる」というイメージを捨てて、「本を好きにさせる」ということに重点を置いてほしいと思います。また、文字を認識する能力「文字脳」の育成も好きな本を選ばせることがスタートです。ですが現状の多くは、大人が「読む本を推薦する」「読む時間を決める」といったことになっているように思います。これは、本に対して受け身の子どもたちをつくることになってしまいます。大人が良い本だと思っていても、子ども本人がワクワクしないと本は好きにならないんです。
まずは、子どものワクワクポイントを見てあげることが大切です。例えば電車が好きだったら電車の本が読みたいし、伝記ものが好きだったり、歴史ものが好きだったり。同じような本ばかり読んでいても良いのです。好きな本を読んでいると、本が面白いから言葉を知りたいし、多読になります。たくさん読ませたら本が面白くなるのではなくて、そもそも面白くなかったらたくさん読まないのです。面白い本を自分で探させてあげてください。
本の対象年齢は気にせずに。
なぜ“自分で探すこと”が必要かといえば、本人の読みやすい文字の大きさは年齢どおりではないからです。これは何歳くらいが読む本だというように、対象年齢が書いてありますが無視してください。本人が好きな本を選んだのに、「あなたは高学年なのに、そんな小さい子が読むような本を読むの?」などと言わないでほしいんです。そうすると子どもはそんなふうに言われたくないために、親が望みそうな本を忖度して選んでしまうこともあります。そうすると、本が好きでない方向になってしまいます。
たとえ大きい文字の本を選んだとしても、「うちの子は、今この文字の大きさが読みやすいんだな」とシンプルに受け止めてください。
文字の大きさはたくさん読んでいくうちに、だんだん認識できるようになるもので、学年が上になったからといって、いきなり小さい文字が読めたり、長文が読解できたりするわけではないのです。まずは、好きな本を選ばせる、読ませる。
その時に親としてすることは、子どもが選んだ本の文字の大きさや絵の配分くらいはチェックして、同じような本を10冊程度選んでリビングに置いておくくらいでしょうか。「これを読みなさい」と言われたら子ども心に嫌なものです。私たち大人でもそうではないでしょうか。
例えば家族に、「毎週1冊は本を読むように。私が選んできた本を読みなさい」などと言われたらキツイものです。おまけに、読んだ本の感想を書くように言われたらどうでしょうか?
薦めるとしても、子どもが好きな本の文字の大きさと絵の配分をチェックして、同じような本を10冊くらいリビングに置いておき、「あなたが好きな本を選んでごらん」といってあげる。せめてそれくらいだったら、たとえ親が選んだ10冊でも、その中から自分で選んだ感があるのではないでしょうか。また、その全部を無理に読ませないでください。もしできれば、その10冊をどんどんシャッフルして変えていく。そうすると子どもは自分で自主的に本を選んで読んでいくことになり、良いスパイラルに入ります。
読解力とは、たくさんの長文、文字を読み込んでいくしかないのですが、子どもが自然と多読になるには、好きな本から入らせてあげること。ここで失敗してしまうと本を読まない子になってしまいます。
書くことができるのは
多読しているかどうか。
作文を上手にするにはどうしたら良いですか?という質問をいただくのですが、これは多読であることが必要です。「(人の話を)聞ければ話せる」「(本を)読んでいれば書ける」と考えています。日本人でも英語を聞いていれば英語を話せるようになるのと一緒で、たくさん本を読んでいる子はたくさんインプットしているので、結果的に自分の考えを書いて表現するスキルが身についているのです。
聞く(インプット)→ 話す(アウトプット)
読む(インプット)→ 書く(アウトプット)
という構図です。
書くことの前に読み解く力「読解力」を育むことが大切なのですが、この読解力は、前述したように様々な体験と言葉がつながってついてくる力です。しかし、親としてたくさん体験させたくても限りがありますよね。それが読書をすれば、それはそれで一つのイメージ体験になるんです。本の世界をとおして、自分の世界を広げることができる、知らない世界を知ることができる。
読書はこのように世界を広げるために必要ではありますが、その読み方には1つポイントがあります。くれぐれも言葉の意味調べをしながら読まないように気をつけてください。子どもが本を読んでいて、「この“厳かな”ってどういう意味?」など質問してきたとしても、「辞書をひいてごらん」ではなく、「最後まで一気に読んでから一緒に調べよう」と声をかけてあげてください。まずは、ストーリーを楽しむこと。ストーリーが頭に入ってから言葉を知ると、とてもイメージしやすくなります。本を読んで言葉を覚えることが目的なのではなく、言葉の本当の意味をイメージできることが大切なのです。
まずは一気に読んで、頭の中でいっぱい想像してストーリーを楽しむ。その上で、使われた言葉の意味を理解していく。それが読解力につながり、自分が使える言葉になるのです。
書く・表現できるためにも、好きな本を自分で選んで、最後まで一気に読んで楽しむ。そして読み終わってから、知らない言葉の意味を調べる。好きな本なら、きっと子ども自らが言葉を知りたいと思うでしょう。そのように大人が子どもの興味を導いてあげれば、自然と多読になり、読解力、文章力、表現力がついてくるものだと思います。
子どもは生身の人間。
親としてどう向き合う?
これからの日本は、世界から衰退途上国と言われているほど、人口減少が進み、経済力が飛躍することは極めて低いのではないかと思われています。だからこそ、「世界のどこにだって行ける」といったメンタルと表現力を持たせる必要があります。そのバイタリティの根っこにある一つが「読解力」。読み解く力というのは、どの世界でも必要となります。
読解力の前段階として、言葉を話すようになるまでの幼少期にいろんな体験をさせてあげて、言葉のシャワーを浴びせながら育んでいく「知覚」があります。たとえば、眩しいところで「眩しいね」といえば、どういうことかわかりますよね。これは、第一回目のコラムに詳しく書いていますので、ぜひ読んでください。
あとは笑顔。幼少期は今しか無いのだから、時間がある限り子どもと接して、その子なりに考えていることを聞いてあげてください。また、「お母さん、お父さんは一生懸命お仕事してきたけど、あなたに寂しい思いをさせてないか心配しているのよね」などと、子どもに対して思っていることを声かけるだけでも、子どもにはその愛情が伝わります。ちょっとした愛情の言葉を伝えながらコミュニケーションを取っていくことが、とても大切です。
とはいえ、どう教育してどう言葉をかけたほうが良いと言っても、子どもは生身の人間ですから、当てはまらないこともありますね。だから親御さんは余計に悩むんだと思います。そういうときは、教育の根っこを思い出してください。何のために教育するのかということを。
次回の「Vol.08」は8月27日(金)にお届けします。お楽しみに!
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