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特集

【玉井式子育て教室II】– Vol.10 – 「表現力」の根底にあるものは「価値観」

2021年9月10日

【玉井式子育て教室II】– Vol.10 – 「表現力」の根底にあるものは「価値観」

これからの子どもたちは、これまでよりも世界に目を向けなければいけない時代を生きることになります。今のままの教育で良いのか、変わっていかなければいけない点は何なのか。グローバル時代を生きる子どもたちの成長のために、どのような価値観が必要なのでしょうか。
何のために教育するのかという、教育の価値観をしっかり持って、「親が笑顔でいること」「子どもへ何よりも愛していると伝えること」そして、「花(成果)を咲かせることだけでなく、丈夫な根っこ(土台)を育ててあげること」を大事にする。そう言うのは、「世界に負けない子に育てる」教育を提唱し、独自の能力育成教材を開発し続けてきた玉井満代先生。

玉井先生の考える子育てと教育について、48回にわたり、さまざまな視点でお届けします。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

《教えてくれたのは》
(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ
代表取締役 玉井満代さん

京都市生まれ、ICT教材クリエイター・脚本・演出家。20年にわたる全国数百の学習塾での指導経験を生かして、学校、またインド、ベトナム、シンガポール等で続々と導入されている「玉井式 国語的算数教室®」「玉井式 図形の極®」など、パソコン・タブレットを使用して学習する教材を全国展開。2021年現在、日本全国で24,000人が学習しており、有名私立小学校・大手学習塾・幼稚園・保育園及び学童などで広く活用されている。また、インド著書には「世界に出ても負けない子に育てる」(青春出版社)他。国内外での年間講演回数は120回(2018年度)を超える。洛南高等学校附属小学校で「玉井式 図形の極®」が授業カリキュラムとして取り組まれている。また、2021年度より、奈良育英小学校(現 奈良育英グローバル小学校)の副校長に就任。

>> TAMAISHIKIオフィシャルサイト
>> 奈良育英グローバル小学校

 

– 編集部 −
第10回目のメインテーマは前回に引き続き「表現力」。
私たちは生まれた時から「泣く」ということで表現しています。その表現は、声を出すことやジェスチャーから言葉へと進化していきます。
「言葉」は何を持って「表現」されるのか。玉井先生が考える「表現」の根底にあるものについてお伺いしました。

インプットしたものを“つなげる”ことが
伝える力に。

幼少期で漢字を覚えたいという子は覚えたら良いと思います。やりたいことをわざわざ止めなくて良いのですから。「漢字をたくさん覚えたい!」「『木』を知って書けた!」「今度は『山』って書けた、楽しい!」。そんなふうに楽しくてどんどん書く。とても良いことです。けれども大切なポイントは、その書けるようになった字を、今度はアウトプットできるようにしてあげることです。結論から言うと、幼少期に文字を書かせる必要はないということではありません。ただ、「書く」前に必ず「読む」という段階があると思っていて、「読む」段階にたくさんの時間を取ることが大切なので、「書く」ことはもう少し後でも良いという話です。

「山」と書けることと、「ぼくは山にのぼりました」と表現できることは、また別の話になってくるのですが、そもそも「山」と書けないとこの文章は成立しません。ですので、最初はどうしても単語から覚えていくのですが、脳の中で状況をイメージしながら、いろいろな単語をつなげて表現できるようにするためには、「つなげてアウトプットしていく」という意識を大人がまず持つ必要があります

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

「○○を覚えた」だけで終わるのではなく、それをどういう場面で、どういう形で使っていくものなのかを伝え、しかもそれを子どもの感性でアウトプットできるようにしてほしいと思います。この「つなげる力」というのが玉井式のトレンドの話なんです。漢字だけでなく算数の公式でも同じです。子どもが「山」という文字を覚えて「『山』と書きなさい」と言われたり、各国の旗を覚えて「この旗は何ですか?」と聞かれたりすると、そのまま答えることはできるようにはなります。しかし、実際の社会はそんな単純な話では無いですよね。実際はいろいろ身につけた言語や知識、理論や文化、影響を受けて培った価値観、その他いろんな教養が全部つながって伝える力になっていくものです。ですので、幼少期において、一つの知識を覚える、つまり暗記だけをさせることに注力して時間を取っていくことが良いのか、ぜひ考えてほしいです。

覚えることも必要だけれど、もっと感性を豊かにできること、例えば本を読む、音楽を聴く、友達とディスカッションをする、そういった経験全てがつながって、伝える力になるということを大人がもっと理解しないといけないと思います。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

親以外で「見てくれる、相談できる」
“良い先生”を見つける。

少し表現力の話からずれるようですが、お伝えしたいことがあります。
子育てに関してこうしたほうが良いと言い過ぎると、親はそれを忠実にやろうとするところがあると思います。「こう育てるとこうなります」というほど、人間は単純な生き物ではありません。ただ、大切なこととしては、子どもが今は何ができていて、何をしたいと思っているのかをもっと見てあげるということ。逆にできていないところに着目しすぎると、お友達はできているのにと焦って見失ってしまうんですね。そうではなくて、もっと自分の子どもができるようになったことに注目してあげてほしいと思います。

また場合によっては、専門家にきちんと相談することが必要だと思っています。例えば、3歳児検診などでいろいろな統計が取れているので、あまりにもできていないことに気がついて心配になったときは、そのようなデータに基づいてアドバイスしてくれる専門家に話を聞いたほうが良いと思います。しかし親同士の話で、「お友達は幼児教育でこういうことができるようになった」といったようなことでは、焦らなくて良いのです。それは、そういう訓練をしたから、その時点でそれができるようになったわけですから。

特に小学生になって知的学習が入ってくると、訓練したか、訓練していないかの違いだけで、「できる、できない」の差が一時的には生じるものです。それを、一生の「できる、できない」に思い込まないこと。そこで焦って、結果的に子どもの自己効力感を下げてしまうことがあります。例えば「九九」がある年齢でモタモタして言えなくても、5年生になれば、みんな普通にできることが多いわけです。今できないことが一生できないわけではないのです。逆に「できない、できない」と言われていると、できなくなってしまいます。
大人の思い込みで子どもを縛らないで、もっと子どもをよく見ていれば、必ず何か強みを持っているものです。もっとよく見て、もっと信じて、「これもできるようになったんだね!」と言ってあげたら、親の想像以上にできるようになりますよ。

ただ一方、どうしても心配なことがあれば、統計を持っている専門家に相談したほうが良いと思います。そういうことがわかっていて信頼できる先生や、下手な励ましではなくて、きちんと子どもを見てくれる専門の先生に、それはLD(学習障害)でできないのか、それとも成長がゆっくりなのか見てもらうことは必要だと思います。
本来、親はあまり焦らなくて良いと思うのですが、焦ってしまうものです。だからこそ、誰か相談できる人が必要だと思っています。私は、奈良育英小学校の副校長になって親御さんと面談をするのですが、そういった時でも、相談してもらうと、すごく安心されることを感じます。

私が和歌山の玉井式教室で中学受験のクラスを教えていたとき、6年生の最後のほうになると、難関校の問題は、私より子どものほうができるようになることもあります。私はコーチですので、選手がちゃんと走っていけば、それで良いと思っています。
では、どうやってそのように伸ばしたのかというと、絶対に子どもの自信を無くさせないようにしてきました。どうしても専門的にこのまま放っておいたら勘違いしていくな、という場合は早めに見つけてあげて指摘はしていきます。しかし、テストの結果で云々を言わない。一緒に伴走しながら、「ここは軌道修正が必要だな」というところだけを伝えて、「できる、できる」と言ってあげたら、早くしっかりできるようになります。 「うちの子は算数が苦手なんです」という親御さんがいます。そういうとき、「いやいや、誰が決めているんですか」と思います。親が思い込んでいると、子どもは本当にそうなってしまいますよと…。

親以外の“良い先生”と出会うことは子どもにとって大切だと思います。それが大学生でも良いと思います。年齢や身分で決まるものではありませんから。
大学生の先生でも、自分自身がいっぱいつまずきながらやってきて、でもきっとあたたかい家庭で育ったんだろうなという人が、「大丈夫、大丈夫、ここがわかったらできるから」と子どもたちをすごく励ましながら教えているところを見ると、大学生の先生でも優秀だなと思います。
そういう意味で、子どもたちのためにも、専門家だったり、良い先生だったり、良い師匠に出会うことも大切だと思っています。学校はもちろん、塾や習い事の先生やコーチなど、きっと子どもに良い影響を与えてくれる大人がいらっしゃるはずです。

 

「表現」することは
赤ちゃんからみんな持っている。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

赤ちゃんから伝えたいことはあって、それを赤ちゃんは泣いて訴えていますよね。「オムツを変えてほしい」「お腹がすいた」などです。ですので、表現力というのは、オギャアと生まれたときから、誰しも持っているものです。表現したいことは誰にでもあるものなのです。子どもなら「お腹がすいた」でもいいし、「トイレに行きたい」でもいい。小さくても、みんな何かを思って何かを表現しています。

赤ちゃんだと、最初の表現は「泣く」ことですよね。そこから大きくなるにつれ、泣くだけでなく、指さしなどのジェスチャーや「声+ジェスチャー」みたいな表現力になり、さらに言葉を覚え、話して表現するようになります。
小さい頃は、子どもが「お腹すいたー!」と言っても、「『お腹がすきました』ときちんと言いなさい」などと注意しませんよね。そんな言い方であっても、その表現を受け止めているんです。ところが、大きくなってきて、社会性を出さなければいけない場面になってきた時に、「そんな言い方をしてはいけない」というふうに教えていくわけです。

2〜3歳くらいまでだったら「○○くんが持っているの欲しいよ!」といっても、その言い方にではなく、「でもそれは○○くんのでしょ?」とその行動に対して指摘します。「『あれが欲しいです』と言うのよ」と言い方自体は注意しないものです。それよりも、なぜいけないかを教えていきます。
そう考えると、TPOで言葉を使い分けることはもっと後になってわかってくるものです。例えば、目上の人にこういう言い方をしたら失礼だとか、先生に対してこういう言い方をするのは良くないとか、いくら友達にでもそんな風に言ってはいけないなど。しかし、そういった言い方や伝え方、表現というのは、その人の人生経験と親や関わった大人の価値観が影響します。例えば、親がお店の店員さんに「早くしてよ!」といった言い方をすると、子どももそれで良いと思ってそのような言い方をするだろうし、「申し訳ないですけど、急いでいるので早くしてもらっても良いですか?ごめんなさいね」と言っていたら、そういう言葉使いになっていくのではないでしょうか。

表現したいことを元々人間は持って生まれてきます。発達段階で最初は泣いて表現し、言葉がわかってくるまでは声とジェスチャーで表現します。そして、言葉を話し始めた時に考えなければいけないのは、子どもの感性や価値観をどう育てるかということを親が意識しないといけないということです。それを意識せずにいると、言葉の使い方だけの指導になってしまいます。大切なことは、表現する言葉は、その人の価値観を表すということ。ぜひ、このことを意識して表現力を育んであげてほしいです。

「表現」によって運命も変わる

言葉はまず聞いて覚えていきます。ですので、親や周りの大人が使う言葉のニュアンスやステキな言葉を選んでいるかどうか、ポジティブな言葉を選んでいるかどうかなどが影響します。つまり、子どもが言葉を聞き、その言葉を自分の言葉として習得していく過程で、周りの大人から聞く言葉が子どもの感性に関わっていくのです。
「ジェスチャー+言葉」の成長段階くらいから、大人はすごく気をつけないといけないと思います。「丁寧な言葉を話しなさい」と言っても、親が使っていなければ子どもも使わないのではないでしょうか。覚えた言葉をどう使うか、どう表現するかは、培った学力、能力や知識だけでなく、本人の価値観によっても左右します。この価値観というのが、表現力においてもとても大事なことだと考えています。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

別に「人類の役に立ちなさい」ということではないですが、やはり将来何らか働くとすると、人に感謝をしてもらえるようなお金の稼ぎ方、お金の上に感謝が乗ってくるような稼ぎ方をして欲しいといつも思っています。そのためには、価値観をどこに持っていくかが大切です。
せっかくこの地球に生まれてきたわけですから、何をやりたいのかを子どもが自分で見つけられるようになることが教育であって、この子には○○になって欲しいから、こうして欲しいということではないと思います。子どもがやりたいことを見つけ、目指そうとするとき、しばしば「表現力」によって人生が変わっていくという事実があります。

マザーテレサの「言葉に気をつけなさい。最終的に運命が変わるから」といったあの言葉大好きなんですが、「あなたは考え方にも気をつけないといけない、考え方が言葉になるから。言葉が行動になり、行動が習慣になっていく。結局それが最終的に運命になっていく」というのは本当にその通りだと思います。

どうしたら良い「表現力」を身につけられるのか。それは「価値観」だと思います。特に親の価値観が大事ですが、周りの大人の価値観も大切です。 大人の価値観が、愛と誠意に満ちているものであれば、子どもに対しても優しさに満ちた言葉がけをするでしょう。そうすれば、子どももきっと、そういう考えになって、そのような表現もしていきます。ですので、表現力といえば「お父さん、お母さん、あなたの価値観はどこにありますか」と、逆の問いかけになります。

子どもたちには、愛と誠意が含まれている言葉がけをしていく。「表現力」を豊かにするためには、そのように大人自身も行動していくことが大切だと思っています。

 

次回の「Vol.11」は9月17日(金)にお届けします。お楽しみに!

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