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【玉井式教育学I】– Vol.12 – 〜なぜ勉強するのか?〜 未来の経済大国とも言われるインドの教育

2021年9月24日

【玉井式教育学I】– Vol.12 – 〜なぜ勉強するのか?〜 未来の経済大国とも言われるインドの教育

これからの子どもたちは、これまでよりも世界に目を向けなければいけない時代を生きることになります。今のままの教育で良いのか、変わっていかなければいけない点は何なのか。グローバル時代を生きる子どもたちの成長のために、どのような価値観が必要なのでしょうか。
何のために教育するのかという、教育の価値観をしっかり持って、「親が笑顔でいること」「子どもへ何よりも愛していると伝えること」そして、「花(成果)を咲かせることだけでなく、丈夫な根っこ(土台)を育ててあげること」を大事にする。そう言うのは、「世界に負けない子に育てる」教育を提唱し、独自の能力育成教材を開発し続けてきた玉井満代先生。

玉井先生の考える子育てと教育について、48回にわたり、さまざまな視点でお届けします。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

《教えてくれたのは》
(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ
代表取締役 玉井満代さん

京都市生まれ、ICT教材クリエイター・脚本・演出家。20年にわたる全国数百の学習塾での指導経験を生かして、学校、またインド、ベトナム、シンガポール等で続々と導入されている「玉井式 国語的算数教室®」「玉井式 図形の極®」など、パソコン・タブレットを使用して学習する教材を全国展開。2021年現在、日本全国で24,000人が学習しており、有名私立小学校・大手学習塾・幼稚園・保育園及び学童などで広く活用されている。また、インド著書には「世界に出ても負けない子に育てる」(青春出版社)他。国内外での年間講演回数は120回(2018年度)を超える。洛南高等学校附属小学校で「玉井式 図形の極®」が授業カリキュラムとして取り組まれている。また、2021年度より、奈良育英小学校の副校長に就任。

>> TAMAISHIKIオフィシャルサイト
>> 奈良育英小学校

 

– 編集部 −
第12回目のメインテーマは「なぜ勉強するのか?」。
日本の教育は、子どもたちみんなが等しく教育の機会を与えられています。世界では教育をどのように考えられていて、何を大切にしているのでしょうか。
日本と海外の教育の違いを見るため、玉井式が導入されているインドの教育事情を例に、玉井先生に教えてもらいました。

国の発展のためにも教育に力をいれるインド

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

インドは学校にいる時間が短くて、午前中で終わる場合や午後から来る場合もあります。学校のキャパシティが間に合ってないので、午前中は低学年が学び、同じ教室で午後からは高学年が学ぶようなことがとても多いです。
玉井式が取り入れられている『DPSランチ校』というインド全土で第3位と言われている大手名門私立中高一貫校は、全部で5千人くらいの生徒がいますが、完全な分業制になっており、いろいろな仕事をするスタッフがたくさんいて、校長先生は夕方4時半には帰ります。先生の給料は安いですが、教えること以外の雑用などは、その仕事をする人がいるのです。それは、今もなおあるカースト制度(※1)によるものですので、日本とは社会の仕組みが違うのですが、当然のことながら、今から発展しようとする国では教育はとても熱心です。
※1 ヒンドゥー教における身分制度

非常に教育熱心な理由でいうと、例えば、インドのタクシードライバーの月収は大体1万ルピーくらいなんですね。1万ルピーというと、日本で言えば1万6千円くらいです。その中で半分は教育費にかけます。そのため、教育のエンゲル係数がものすごく高いのですが、月収の5〜6割を教育費にかけてまで、次の世代が良い生活をできるように考えています。

インドだけでいうと、どのカーストでも大学に通えるようになったのはこの12〜13年のこと。カーストによっては、どんなに勉強しても入れない大学があったのですが、それがオープンになったのです。そうなった時こそチャンスがあるということで、賃金が安い家庭でも教育にかけていらっしゃるんですね。そこでいろんな問題が出たのですが、その一つが、違うカーストの人と大学で出会って恋愛すること。カーストが違うと絶対に家族が結婚させません。そういったトラブルも発生しています。このように、カースト制度は変わらないため、教育を受けて職につけたとしてもインド国内ではまだまだ偏見がありますし、経済は全てカースト制度で成り立っているため、変わりようのないほどの貧富の差がまだまだあります。そのため、勉強して海外で活躍することを目標にしています。一方、比較的豊かな家庭の子が通う『DPSランチ校』のような私立学校の子どもの多くは、学校の帰り道で物乞いをする子どもたちを毎日目にし、この国を変えたいという強い志を持って学んでいます

このように、多くの国民が子どもの教育に熱心になっているインドのこれからの発展は、きっと目覚ましいものがあるでしょう。

世界はアウトプットさせる教育が主流

インドと日本の教育は全然違っていて、覚え込んで暗記というよりはむしろアウトプットさせる教育です。例えば、インドで私が理科の授業をしていても手を挙げる子がいっぱいいます。間違っていても良いからとにかく発言するのですが、それが大事。間違っていても自分の意見を言うことが大事なんです。海外で何も意見を言わなかったら「この人は何しに来たんだろう?」と思われるだけです。

日本には「空気を読む」ということがありますが、その感覚は海外ではスタンダードではありません。えらい人が言っていたらみんなで黙るなんてことはあり得ないんです。
例えば、今海外でも企業の社員が新型コロナのために在宅ワークをしていることがありますが、社長としては社員に会社に来て欲しくても、かなりきちんと説得しないと戻ってきません。日本だと、社長が「在宅ワークはもうやめ」と言えば、みんな会社に戻らざるを得ない感じですが、海外では交渉が当たり前になっています。欧米や北欧も社員と経営者が対等なので、そのようになっています。
インドはカースト制度があることもあり日本寄りですが、労働契約書はとても細かいです。カーストが下の方の人は難しいものの、対等の立場だと「書いて無いから」「聞いていないから」というのが結構まかり通っていくのです。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

このように海外では、自分の意見や主張をはっきり言うことが当たり前ですので、アウトプットする力が生き抜く力にもなっていきます。これからグローバル社会が加速する中で、日本も世界に巻き込まれていくでしょう。世界の人たちと働いたり、何かを一緒に行ったりすることも、否が応でも増えていくのではないかと思います。
以前のコラム「Vol.9自分の考えを伝える力『表現力』」でもお話したように、私はこのような社会の流れにおいて「表現力」を育むことがいかに大事かと考えています。

 

恵まれているからこそ、“社会のため”とつなげていく

先ほども言ったようにインドは貧富の差がはげしく、すごくお金持ちの子もいれば、物乞いをするほど貧しい子がいるほどです。そして、その通学途中では、「その本ちょうだい」「あなたの持っている鉛筆一本でもちょうだい」という子と出会います。だから私はDPSランチ校の子どもたちに、「恵まれている人は『私は恵まれているから関係ない』なんて言って良いと思う?恵まれて勉強ができる環境のある人には役割があってね。自分の強みを見つけて、それで何か社会の役に立つ。あのような恵まれない子どもたちがいなくなるような世の中にして欲しいのよ」と声をかけるんです。

私は国内外の子どもたちにいつも「あなたたちには絶対強みがある」と言います。そして、なぜ勉強したり、いろいろなことを学ぶのかを伝えます。「あなたの強みを見つけるため。そしてその強みが見つかったら、社会には何億人もご飯を食べられない、勉強ができない子どもたちがたくさんいて、そういった社会を良くするため、未来を良くするためにもなるのよ」という話をします。そうすると多くの親御さんからの感想で「子どもの意志が変わりました」と言ってくれるんですね。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

日本の子どもたちは、そういった世界の現実を知らされていないので、ゴミ山で自分より小さい子が働いていてご飯も食べさせてもらえないとか、まさか人身売買がすぐそばのアジアで行われているなんてことはわからないのです。 「恵まれないのはどこかよその国の関係のない子」「世界で起こっていることは自分に関係のないこと」になっていると自分と世界はつながりません。だから、そこをつなげてあげることが大事だと思っています。「恵まれているあなたたちには役割があるんだよ」と。ただ、その役割は何でも良いとも伝えます。何でも良いからあなたの強みを生かして人の役に立つ、そしてもし親になったら笑顔で子どもに愛情を与える、それが社会のためになっている。伝え方を工夫すれば、子どもは自分にも何かできるかもしれないと勇気が出ると思います。特殊な役割をイメージする必要はありません。

どの子どもたちにも一人ひとり素晴らしい可能性があります。それを本気で伝えていく大人がいっぱいいると良いと思います。そのためにもまずは、大人自身がイキイキと働いていることが大事だと思います。夢を持って働いている姿が楽しそうだなって感じると、子どもたちもきっと、将来はこれをしようと夢を持って勉強すると思うんです。親が帰ってきて「しんどい」ばかり言っていたら働きたくなくなりますよね。教育に携わっている先生には、なぜ先生になったのかを伝えて欲しい。 理想だと言われるかもしれません。しかし、理想がない世の中で良いのでしょうか。理想があってこそ希望があり、そこに到達できない苦しみや悲しみ、そして到達したときの喜びもあるのです。理想がないと何も起こらないですよね。理想はあったほうが良いし、高い志が未来を作ると思います。

 

次回の「Vol.13」は10月1日(金)にお届けします。お楽しみに!

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