特集

【玉井式教育学II】– Vol.20– 子どもが「自分で考えて行動する」には

2021年11月26日

【玉井式教育学II】– Vol.20– 子どもが「自分で考えて行動する」には

これからの子どもたちは、これまでよりも世界に目を向けなければいけない時代を生きることになります。今のままの教育で良いのか、変わっていかなければいけない点は何なのか。グローバル時代を生きる子どもたちの成長のために、どのような価値観が必要なのでしょうか。
何のために教育するのかという、教育の価値観をしっかり持って、「親が笑顔でいること」「子どもへ何よりも愛していると伝えること」そして、「花(成果)を咲かせることだけでなく、丈夫な根っこ(土台)を育ててあげること」を大事にする。そう言うのは、「世界に負けない子に育てる」教育を提唱し、独自の能力育成教材を開発し続けてきた玉井満代先生。

玉井先生の考える子育てと教育について、48回にわたり、さまざまな視点でお届けします。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

《教えてくれたのは》
(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ
代表取締役 玉井満代さん

京都市生まれ、ICT教材クリエイター・脚本・演出家。20年にわたる全国数百の学習塾での指導経験を生かして、学校、またインド、ベトナム、シンガポール等で続々と導入されている「玉井式 国語的算数教室®」「玉井式 図形の極®」など、パソコン・タブレットを使用して学習する教材を全国展開。2021年現在、日本全国で24,000人が学習しており、有名私立小学校・大手学習塾・幼稚園・保育園及び学童などで広く活用されている。また、インド著書には「世界に出ても負けない子に育てる」(青春出版社)他。国内外での年間講演回数は120回(2018年度)を超える。洛南高等学校附属小学校で「玉井式 図形の極®」が授業カリキュラムとして取り組まれている。また、2021年度より、奈良育英小学校の副校長に就任。

>> TAMAISHIKIオフィシャルサイト
>> 奈良育英小学校

 

– 編集部 −
第20回目のテーマは「自分で考えて行動するには」。
子どもに愛情があるからこそではありますが、親は無意識のうちにも子どもの転ばぬ先の杖となり、誘導していたり、コントロールしたりしているものです。
子どもの意思を引き出し、自立するようになるために、親はどう意識をして接すれば良いのか。
教育に正解はないという玉井先生が、その教育の根幹に絶対持っておきたいもの。それを教えてもらいました。

子どもに自分の行動を考えさせるには。

「自分で自由に考えてみましょう」と子どもたちに言っても、結局は最終的な方向性や目的を大人が持ちながら導いていることがほとんどです。それをどう打破していくのかが大事なポイントです。

奈良育英小学校では、折々に「自分で考えることが大事」だとわかるような授業形態にしています。例えば、子どもが何か虫をつかまえた時にも、その虫をどうしたいのか、育てたいのか、逃がすのか、皆に教えたいのか、生態を調べてみたいのか、自分で考えるように促します。
また、子どもからの「先生、これしていいですか?」に、単に「いいですよ」で終わらせるのではなく、私はよく子どもに「あなたはどう思う?」と聞き返します。家での会話でも、例えば「お母さんこれやっていい?」と聞かれたら、子どもに問い返してみてください。「あなたはどう思う?」と。すると自分なりにちょっと考えて、「○○だからやめておこうかな」「やはり〇〇だからやってみよう」などと自分で決めることがあります。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

「宿題は後でするから、先に遊びに行っていい?」と聞いてきたときも、「あなたはどうしたいの?」と自分で決めさせる。「宿題をしてから行きなさい」と、親が決めなくてもいいのです。先に遊んでも、言ったとおり後でするかもしれないし、しないかもしれない。たとえ、宿題をしていかなくて学校で失敗したとしても(とはいえ放ってはおけませんが)、「ほら失敗したでしょ」とは言わないで、またそういうシチュエーションになったときに、「この前、失敗していたけどどうする?」ともう一度聞く。同じように宿題をしなかったとしても、根気強く、このようなやり取りを繰り返していくしかないのです。

きっとある時期になれば、子どもが自分でどうすれば良いか気が付くもの。それまで大人は忍耐強く待つしかないのです。親としては辛いことですが、自分で考え、自分で行動してきた子どもが大人になったとき、その効果を感じることができるはずです。

教育の正解というのはない。
だから大事にしたいもの。

教育の結果について、恐ろしいところは、「何歳で影響が出てくるのか」がわからないところです。人生を振り返って「これで良かった」と思えたら幸せだと思いますし、みんなが羨むような学歴や生活をしていても、本人が「もっとこうだったらな」と後悔していたら、それは教育が失敗していたということになるのではと思います。なぜなら、教育の最終目的は「子どもの人生が幸なものになること」だからです。

教育の成果というものはずっと先にならないとわからないものですから、教育の方法や手段については、時代の流れの中で、永遠に正解にたどり着けない課題だと思います。しかし、そうだったとしても考え続けていくものでもあり、理想は持つべきだと思います。 私はよく「愛なき教育は害」だと言うのですが、その教育方法に愛があるかどうかを元に考えれば、オリジナルの方法を見つけられるのではないかと思っています。専門家が「こうすべき」という教育方法は、一つの方法ですが、愛をもって子育てしていたら、自分なりのオリジナルの形が見つかると思います。ですので、あまりHOWTOにこだわらなくて良いのではないか、と思います。
「愛なき教育は害だから、愛のある言葉をかけよう」「昨日できなかったことを今日できたら、それを認めよう」ということが、教育全ての根幹だと考えています。

親の愛情がゆえに、できれば良い学校に行かせたいと思うのは当然ですが、親が「願う」ことと「強制」することは別のことです。強制すると愛ではなくなっていますよね。
これからの時代は、この有名大学へ行ったら良いという考え方ではなく、子ども本人が学びたいことが学べるところに行くべきです。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

偏差値で大学を選ぶのではなく、本当に学びたいものを見つけて大学や専門学校に行かないと、そもそも授業を受ける価値を子ども自身が感じられず、単に卒業するために単位を取ることが目的となってしまいます。もうそういった時代ではありませんので、今までの大学や学校の選択の在り方を変えてほしいと思います。

 

親はつい子どもをコントロールしてしまっている。

かつての教え子の中に、医者のお子さんがいて、本人も医者になりたいと思っており、親御さんも望んでいました。しかし、親御さんのアプローチの仕方が少々強制的だったため、反抗してしまったお子さんがいたんです。子どもは親の言われたとおりにやりたくないものなのでしょう。一度は全く別の道に進みました。ですが、やはり医者になりたい気持ちがあったため、医学部へ入り直していました。心のどこかでは、親御さんの職業を尊敬していたのですね。

逆のパターンもありました。こちらのお子さんは、親御さんの望むとおり医学部へ行ったのですが、途中で「妖怪の研究がしたい」と言い出して、親御さんから私にも相談されたことがありました。実のところ私は前から、本当は医者になりたくないのだろうなと感じていたんです。親御さんが医者だから頑張って医者になろうとしているのかなと。
小さい頃から塾で見ていると、そのお子さんは歴史への興味が高く、特に歴史の裏側を読むことがすごく大好きだったんです。私は心の中で、「この子はきっとこういった道が良いんだろうけど、お家が病院だから医学部に進むんだろうな」と思っていました。やはり、医学部を途中でやめて民俗学などの研究ができる学部へ入り直したそうです。今は立派な学芸員になっています。
これはご家庭の教育が悪かったわけではありません。この親御さんは強制的に勉強をさせることは全くなく、むしろ子ども本人の意志に任せているような雰囲気でした。それでも何となく医者の道に進んだ方が親は喜ぶと、子ども自身が敏感に感じとっていたのでしょう。とても「良い子」だったんですね。けれども、この遠回りは無駄ではなかったと思っています。彼は立派な青年に成長し、親子関係も良好だからです。

このように、習い事や塾など強制しているわけでなくても、何となく親が誘導していることがあります。「これやってみる?」と聞いて、子どもが「うん」と答えるのは何故でしょうか。子どもが「うん」と言う場合には、「自分がしたいから」ではなくて、お父さん、お母さんの「してほしい」という思いを子どもが汲み取っていることがあるのです。習い事の体験をしてみて「楽しかった?やってみる?」「うん」というのは、子どもが親の思いを察知して、親を喜ばせるために言っていることがあるのです。

もし、そのようなことがあっても、どこかで子どもが自分で気がついて、自ら意見や想いを話すようなら、好きな道へ軌道修正すれば良いと思います。気づいた時に、ちゃんと親が軌道修正させてあげれば、その教育は失敗していないと思います。それくらい親子は以心伝心なところがありますから。

親の思惑を子どもはわかって反発する場合もあります。親が願っていたのとは違う道を進んだりしたら、よく親御さんは「失敗だったんでしょうか?」と言われるのですが、せっかく子どもの本心がわかったのですから、「こっちへ進みたい」という子どもの気持ちに口出しせずに本人に任せてあげてください

親子の会話でも、親が話すか子どもが話すかだと、子どものほうがよく話す家庭は、すごく教育が成功しているなと思います。私の前でも、子どもが色々と話をして、親御さんが「そうね」と聞いているのを見ると、良い育て方をされているなと思います。逆に残念に思うのは、子どもが側にいるのに、「うちの子は〇〇ができていない」「あれもこれもだらしない」などと悪く言うこと。子どもにとって、とてもショックなことです。

困っていることを言い出せないような親子関係ではなく、何かあったら真摯に相談に乗ってあげる。お父さん、お母さんは、何を言っても絶対否定しないで聞いてくれるという関係性を作って欲しいと思います。否定されると相談したくありませんよね。家庭だけではなく、塾や習い事もそういう指導をしてくれる先生を選んだほうが良いと思っています。

 

次回の「Vol.21」は12月3日(金)にお届けします。お楽しみに!

関連特集
>>【玉井式教育学II】– Vol.19– 子どもの「強み」を引き出し、伸ばすには
>>【玉井式教育学III】– Vol.21– 価値観の持たせ方「子どもがどのように能力を生かすか」