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【玉井式教育学III】– Vol.22– 子どもの好奇心は“自由”が伸ばす

2021年12月10日

【玉井式教育学III】– Vol.22– 子どもの好奇心は“自由”が伸ばす

これからの子どもたちは、これまでよりも世界に目を向けなければいけない時代を生きることになります。今のままの教育で良いのか、変わっていかなければいけない点は何なのか。グローバル時代を生きる子どもたちの成長のために、どのような価値観が必要なのでしょうか。
何のために教育するのかという、教育の価値観をしっかり持って、「親が笑顔でいること」「子どもへ何よりも愛していると伝えること」そして、「花(成果)を咲かせることだけでなく、丈夫な根っこ(土台)を育ててあげること」を大事にする。そう言うのは、「世界に負けない子に育てる」教育を提唱し、独自の能力育成教材を開発し続けてきた玉井満代先生。

玉井先生の考える子育てと教育について、48回にわたり、さまざまな視点でお届けします。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

《教えてくれたのは》
(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ
代表取締役 玉井満代さん

京都市生まれ、ICT教材クリエイター・脚本・演出家。20年にわたる全国数百の学習塾での指導経験を生かして、学校、またインド、ベトナム、シンガポール等で続々と導入されている「玉井式 国語的算数教室®」「玉井式 図形の極®」など、パソコン・タブレットを使用して学習する教材を全国展開。2021年現在、日本全国で24,000人が学習しており、有名私立小学校・大手学習塾・幼稚園・保育園及び学童などで広く活用されている。また、インド著書には「世界に出ても負けない子に育てる」(青春出版社)他。国内外での年間講演回数は120回(2018年度)を超える。洛南高等学校附属小学校で「玉井式 図形の極®」が授業カリキュラムとして取り組まれている。また、2021年度より、奈良育英小学校の副校長に就任。

>> TAMAISHIKIオフィシャルサイト
>> 奈良育英小学校

 

– 編集部 −
第22回目のテーマは「子どもの好奇心」。
子どもの知ることへの興味、楽しさやワクワクした気持ちは、学びの芽になります。
どういう状況であったり、周りの大人がどのようなことを意識して接したりすれば、その芽を大切にできるのか。
玉井先生に、子どものやる気や好奇心につながる印象的なエピソードを教えてもらいました。

佐保川から獲ってきたもの

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

奈良育英小学校の近くに「佐保川」があります。そこで水を汲んできて、その中に何か生き物がいるか観察する授業がありました。その時は、水の中にヤゴがいたんです。子どもたちは、それをスクリーンに映し出し、「こんなのがいたよ。でも、これが何か僕にはわからないな」などと言いながら、みんなで見ていたんです。自分で川に入って、何がいるかわからないながら獲って帰ってきて、みんなで共有し「何かな?」と探ってみる。先生が教えるのではなく、子どもたち自身が探求する授業です。

ある子が「サソリだと思う」と言いました。するとみんなが「サソリ〜?」「サソリにしてはハサミもないし…」みたいなことを言っていましたが、それでも先生は答えを言わずにニコニコしていたんです。そのうちに「それウスバカゲロウの幼虫だよ」と、このヤゴを知っている子が教えてくれました。みんなは「おお〜〜!!そうなの?!」とビックリ。そこから「どれどれ」と図鑑を見て調べ始め、

「ウスバカゲロウって一体どのくらい生きるんだろう?」
「このヤゴがあんな風になるの?」
「じゃあ他にどんな似ている昆虫がいるかな?」
「蝶もそうなんじゃない?」
「蝶もカゲロウも同じように空を飛ぶ生き物なのに、どうして卵を産むところが、水の中だったり葉っぱの裏だったり違うんだろう?」

などと、どんどん子どもたちが自分の中の「なぜ?」を膨らませながら、活発に議論をするというシーンがいっぱいありました。これこそが、子どもたちの好奇心を紡ぎ出す、素敵な探究の授業だなと感じたものです。

表現力を育むためには、
大人の形に子どもをハメない

玉井式では、全国の学習塾とコラボしている「表現授業」があります。ある時、「ざんねんないきもの事典」という、いろいろ残念なことになっている生き物を紹介している本を参加した子どもが取り上げてくれたので、その本に載っていたトビウオについてディスカッションをしました。トビウオは、大きい魚に追われて捕まりそうになったら海から飛び出して逃げますが、飛び出した途端、上からカモメかなにかの鳥がきて、パクッと食べられるという残念な魚。

「じゃあこの魚が残念じゃないためには、どうしたら良いと思う?」と、私がみんなに声をかけました。すると、「小さいと食べられるから大きくなったらどうだろう。その大きい魚より大きくなったら海の中で追いかけられないよね」とある子が言い出し、別の子が「でもその大きい魚も鯨とかに食べられるんじゃない?」などとディスカッションが始まりました。
「じゃあ、大きくなって羽根もつけたらいいんじゃない?カモメより大きい魚になって、空も飛べたら、カモメにも食べられないよ」
「海の中でも食べられそうになったら、やっつけられるように、針がいっぱい付いていたらいいんじゃない?」

など、どんどんアイデアを出していると、最後にある子が「でも、そこまでいくと、そもそも魚でも何でもないんじゃない?」と疑問を投げかけたりして、とても楽しいトークが繰り広げられました。トビウオをどう改善したら良いかを話していて、最後に子どもがふと、矛盾に気が付いたという楽しい時間だったんです。

子どもは、自分でフリーに話して良いという安心安全な場所さえあれば、つまり誰からもジャッジされず、大人から下手にアドバイスをされるわけでもなかったら、いろんな想像力を働かせながら自由に発言してくれるという、元々の子どもの持っている良いところが出現します。
ですので表現の授業では、「こういうところが良かった」とか、「もっとこうしなさい」といったことを言わないようにしています。「こういうところが良かった」と言うだけでもジャッジになるので、「素晴らしい!」「その笑顔が良いね!」といったことだけに徹して、子どもたちが安心安全の中で自己肯定感を育めるようにしています。

子どもたちが何を言っても、グダグダしていても、時間がかかっていても、絶対に止めません。「もういいです。時間ですよ」などと言わないようにしていたら、自分たちで「あれは長すぎたよね」「もっとこうしたほうが良かったね」と、ちゃんと考えられるようになるのです。大人は「待つ」ことが大切な時があると思います。

当然、大人が先に指示したほうが早いです。「こうしなさい、ああしなさい。ひとり3分です」と、ルールを作ったほうが早いためそうなりがちなのですが、子どもたちの成長にとって、それは絶対にしないほうが良いのです。最初はすごくまどろっこしくてグダグダのようでも、回を重ねていくと、そのうち発表することに自信がついてくるものです。何よりも子どもたちがイキイキと表現できるようにするには、何を言っていても、周りの大人が楽しんであげられるということが、表現に対する自信につながるのではと思います。

 

子どもの選択範囲を広く

好奇心について、先ほど川の中のヤゴの話をしましたが、その生き物に対して、全員が好奇心があるわけではありません。けれども、その時間で見つかったものに対して、「何が見つかったのかな?!」と多くの子がワクワクした様子でした。
例えば、授業でカブトムシの勉強をするとして、「カブトムシは何年間土の中にいて〜」と先生に教えられるより、自分たちで生き物を探しに行って「これは何だろう?」とまずは思うことの方が、好奇心が醸成されますよね。そういうきっかけを大人がどれほど作ってあげられるかということだと思います。
こういった授業こそがとても大事だと思います。元々、奈良育英小学校は体験型の学びを大切にしてきました。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

好奇心を醸成するきっかけ作りの大切なポイントは、子どもの選択範囲を広くしてあげることではないかと思っています。「カブトムシ」「セミ」「アサガオ」などを決めるのではなく、「佐保川の生き物」といったように、範囲が広いと好奇心が膨らみます。みんな「wonder(不思議)」から入るからです。それはとても重要なことです。

国語などの教科にもそのような体験型学習が活かせないかと考えています。国語も教科書を与えられて、楽しいか楽しくないかは関係なく、とにかく文章の内容を理解できるよう指導されます。しかし、そこに子どもたちの選択はないですよね。これからは、子どもたち自身がどんな授業を受けたいかという授業があっても良いのではないかなと思っています。
教育方法には正解がないと思っていますが、理想は必要です。まだまだ挑戦ですね。

 

次回の「Vol.23」は12月17日(金)にお届けします。お楽しみに!

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