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特集

【玉井式教育学III】– Vol.23– 子どもたちが希望を持って生きていけるように

2021年12月17日

【玉井式教育学III】– Vol.23– 子どもたちが希望を持って生きていけるように

これからの子どもたちは、これまでよりも世界に目を向けなければいけない時代を生きることになります。今のままの教育で良いのか、変わっていかなければいけない点は何なのか。グローバル時代を生きる子どもたちの成長のために、どのような価値観が必要なのでしょうか。
何のために教育するのかという、教育の価値観をしっかり持って、「親が笑顔でいること」「子どもへ何よりも愛していると伝えること」そして、「花(成果)を咲かせることだけでなく、丈夫な根っこ(土台)を育ててあげること」を大事にする。そう言うのは、「世界に負けない子に育てる」教育を提唱し、独自の能力育成教材を開発し続けてきた玉井満代先生。

玉井先生の考える子育てと教育について、48回にわたり、さまざまな視点でお届けします。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

《教えてくれたのは》
(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ
代表取締役 玉井満代さん

京都市生まれ、ICT教材クリエイター・脚本・演出家。20年にわたる全国数百の学習塾での指導経験を生かして、学校、またインド、ベトナム、シンガポール等で続々と導入されている「玉井式 国語的算数教室®」「玉井式 図形の極®」など、パソコン・タブレットを使用して学習する教材を全国展開。2021年現在、日本全国で24,000人が学習しており、有名私立小学校・大手学習塾・幼稚園・保育園及び学童などで広く活用されている。また、インド著書には「世界に出ても負けない子に育てる」(青春出版社)他。国内外での年間講演回数は120回(2018年度)を超える。洛南高等学校附属小学校で「玉井式 図形の極®」が授業カリキュラムとして取り組まれている。また、2021年度より、奈良育英小学校(現 奈良育英グローバル小学校)の副校長に就任。

>> TAMAISHIKIオフィシャルサイト
>> 奈良育英グローバル小学校

 

– 編集部 −
第23回目のテーマは「子どもが人生の希望を持てるために」。
日本の若者が世界に比べて、「自分の将来に明るい希望を持っていない」という調査結果があります。
なぜそう思ってしまう子どもが多いのでしょうか。夢や希望を持って前向きに人生を生きていける心はどう育まれるのでしょうか。
玉井先生の考えを教えてもらいました。

世界と比べて将来に希望が持てず、
社会への関心が低い。

2019年に内閣府が行った18歳意識調査で(我が国と諸外国の若者の意識に関する調査)、「将来へ希望を持っている」という質問項目で、日本人は60%、他の国は軒並み90%以上です。「自分は大人だと思う」というのは、日本は29.1%なのですが、インドやアメリカは80%くらいあるんです。

また、「自分は責任がある社会の一員だと思う」というのも、インドだと92%なのですが、日本は44.8%で一番低い。中国は96.5%で日本はその半分にも満たないんです。
社会課題について家族や友人など周りの人と積極的に話している」というのも、韓国以外の他の国は軒並み80%以上で、日本はなんと27.2%、韓国は55%なんです。これに対応するように「自分の国には解決したい社会課題がある」というのは、他の国は同じように80%くらいなのですけど、日本の18歳は44.6%です。

日本では、社会課題があると半分くらいの18歳は思っているけれど、半分以上は思っていない。「自分で国や社会を変えられる」という質問項目では、インドは83.4%なのですが、日本はなんと18.3%なんですね。つまり、18歳でもう諦めていると見えてもおかしくない結果になっています。このメンタリティで、この国は独立国としてやっていけるのか?と心配になります。

この結果はとても重要な調査で、ちゃんと調べられたデータに基づいています。この結果を踏まえると、日本の若者は国や社会に対する意識が楽観的ですが、悪く言えば無責任とも取れてしまうかもしれません。これは若者が悪いのではなく、完全に日本の教育の問題だと思っています。数学ができるかできないかとか、読解力があるかないかいったことよりも、もっと大きな社会問題だと思います。

日本の偏差値文化。
本当にやりたいことを考えるには。

やはり偏差値文化の影響があるのではないでしょうか。偏差値とは、進学の判断基準にはわかりやすい数値なのでつい頼ってしまうのは理解できます。しかし、日本では偏差値を判断基準にして進路選択をすることが多いと思いますが、他のほとんどの国では偏差値という文化がありません。
ただ、偏差値を判断基準にすること自体が悪いというよりも、そればかりを目的にしすぎることが問題なんだと思います。もっと18歳までに鍛えたり、考えさせたりしないといけないことがあるにも関わらず、それをせずに偏差値を伸ばすことばかりに注力しています。「こういう点数をとったらこういう大学へ行ける」など、大切な育成年代にそんなことに時間を取りすぎているのではないのかと思います。

インドには大学が山ほどあるのですが、偏差値などわかりません。インドにもデリー大学といった有名な大学がありますし、アメリカにしてもハーバードを始めとして、世界が知っている名だたる大学があります。
しかし一方で、名前を聞いたこともない大学がたくさんあって、いろんな人たちがそこに自由に入学し、学び、卒業していきます。偏差値が高いから入るのではなく、「あなたは何を学びにその大学に行き、そこで何を身につけましたか」ということに価値を置くため、諸外国では「どこの大学出身だ」ということをそれほど意識しないのです。もちろん、超有名大学になると、その名前の価値はありますが、そうでないとダメという発想があまりないと思います。

若者の希望の話に戻りますと、さきほどの調査結果を見る限り、将来の夢を持っている人が少ないように思います。夢を持つ以前に、自分のことを社会に対して責任を持った大人だとも思えていない。

やはり大学に行くまでに、自分自身や社会について考えさせる時間が必要なんだろうと思います。また、大人の価値観を押し付けすぎているようにも思います。例えば、高校の進路にしても、もっと自由で良いと思うのですが、大人が「ここへ行ったほうが良い」とか「ここなら行ける」といったことを言い過ぎて、子ども自身が「僕はこういうことをやりたいのに、本当にその高校が合ってるのかなぁ」と、そんなことも考えられない、考えてはいけないといったことになってしまっています。

夢とは、60歳でも70でも80でも90歳でも、命ある限り何歳になっても持てると思っています。夢というのが希望だとすると、いつまでも希望を持って生きていけることがとても重要だと思います。
夢の形がわかりやすい、例えば宇宙飛行士やお医者さん、アスリートになりたいとか、社会的にもすごく地位が高い仕事をしたいとか、お店を持ちたいといったことだけが夢ではなく、将来父親になったら自分の子どもをちゃんと楽しませられる親になりたいとか、いつも周りの人を楽しい気持ちにさせる人でありたいなど、形がなくても良いと思います。また、必ずしも夢を周りに認めてもらったり、肯定してもらったりしなくて良いとも思います。
例えば、季節の木々を育てて、いつも綺麗に整えている庭が自分の自慢で、「みんなにどのお花をあげたら喜ぶだろう」と考えることも素敵な夢だと思うんです。自分自身が素敵だと感じること、それをしていることが楽しいと思えることが希望につながります。
自分がどうしたいか、自分の価値観はどういうものなのかをじっくり考える時間が、人には必要だと思います。

 

自分のしたいことを
話し合える土壌を。

家庭で、お子さんの夢について語り合う時間はどのくらいあるものでしょうか。
子どもに夢を聞いたら、例えばケーキ屋さんやお花屋さん、アニメのヒーローなど身近な存在を挙げることがあると思います。そこで「へ〜、どうしてそう思ったの?」とか「いいね〜」と肯定的に話を聞いているうちに、ある時「やっぱり夢が変わった。こうなりたい」と言ったら、「それも良いよね。どうしてそう思ったの?」と肯定的に聞いてあげる。そのうち、学校に通って大きくなっていくと、現実的に「こんな道に進みたいな」と言い出すこともあるかと思います。そのときになって、「じゃあ、学校どうする?」と具体的に話をしてあげる。このように、小さい頃は知っている範囲のなりたいものを言いますが、その夢の形は成長とともに変わっていくことがあるでしょう。ここで大切なことは、そういった子どもの夢について話し合う土壌が親子の間にあるかどうかです。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

子どもからすると、中学生など反抗期に入った時に、親から「夢は?」と聞かれても嫌かもしれませんが、何でも話してくれる小さい頃から、そういう土壌を作ってもらえてたら嬉しいものだと思います。学校の出来事だけではなく、子どものしたいことについて、人生について、その年齢に応じて話しをする土壌があれば、大きくなっても「こうしたい」「ああしたい」という話ができるようになるのではないでしょうか。

子どもは親に何でも100%話をするわけではないですが、それはそれで良くて、子どもがこっそり考えていることってあって良いと思います。けれど親としては、子どもが何かしたい時には力を貸したいと思うもの。そういう時に、お互いが話しやすい関係性を築いて育てていくのもひとつです。
いつも成績のことや進路のこと、学校であった出来事ばかりを聞いていると、単なる子どもの業務報告でしかありません。「タスクはここまで達成しました」のように。そうなると「ここまで達成するために、こうしなさい」といった流れになってしまうのではと思います。
課題に対して「こうしなさい」というよりも、もっと自由な発想で夢を持つことが大切で、その自由さが良いことなんだと伝えることで、子どもの希望が広がっていくのではないでしょうか。

例えば、本当は医者になりたくなくても、医者の子どもだから医者になって当たり前に思われて、プレッシャーだけを感じて楽しめず、いろんな迷いが自分の中で渦巻ながら生きていくことになったり、親が警察官で、「大変そうだけど、正義の味方で頑張っているんだなぁ」と憧れて子どもも警察官になったり、反対に「あんなに大変そうなのは私には無理。でも法律家になりたい」と、親の職業や価値観に、子どもはとても影響を受けているものです。
結局は本人自身が「これで良かった」と納得できるような人生でないとつまらないと思うんです。だからこそ、親の押し付けではなく、子どもが自由にしたいことを話せる土壌を家庭で作って欲しいと思います。

「やりたいこと」「役に立つこと」を
大事にする価値観。

私の場合、教科書準拠の教材に「この教科書だと、子どもは算数が苦手になるのでは」と感じたため、自分でオリジナル教材を作って、それを伝えながら広めてきたという経緯があるのですが、私はこれで良かったと思っています。
当時、「教材メーカーになるには、教科書準拠じゃないと絶対に売れない」とアドバイスをたくさんもらったものです。塾で使われている教材もほとんど教科書準拠でしたので、そうでないものは売れっこないと。

けれど、この教科書の順序で算数をやっていては、下手したら中学の数学も苦手になるんではないかとストレスを感じていました。例えば、分数は実は割り算だということを、後から教えるのではなく、分数を教える段階で「2分の1は1÷2だよ」と割り算につなげておいたほうがわかりやすいのでは?といった疑問の数々があったんです。それらを自分で整理して新しい考え方で教材を作ったのですが、お金もネームバリューもない、和歌山の田舎でちょっと流行った学習塾の先生が作ったオリジナル教材など、誰も使わないと言われましたし、いくつものハードルがありました。
しかし、「絶対これでないとダメだ、教科書準拠はダメだ」と信念を持って作ったものを評価していただいて、今や「玉井式」を全国で2万4千人が使ってくださって、海外でも導入していただいています。

要は「絶対違う」と自分が思うなら、そこはチャレンジしたほうが良いと伝えたいのです。もし、当時の私が「教科書準拠じゃないと売れないか〜」と妥協していたら、おそらく中途半端で、他の教材と似たり寄ったりのものができ、結果は違ったでしょう。 私は売れるか売れないかではなく、「絶対にこの考え方で作ったほうが、子どもたちの能力は開花する」と信じた方向に向かいました。
私は50歳からスタートしたので、もっと若いうちにできていればと思ったものですが、それは私の人生のタイミングだったんだと思います。また、人生仕事ばかりという犠牲はありますが、それに対する後悔はなく、もっとやりたいことが膨らんでいます。

若い人たちには、何か「違う」と感じることがあれば変えようとしたり、チャレンジして欲しいと思っています。
「これは本当に人々のためになるんだ」という確信を持っているのだったら、躊躇なくとことんしてもらいたい。若いうちでしたら、失敗しても立ち上がれるものです。情熱を持って人の役に立つことだと信じてしていたら、必ず賛同してくれる人がいるものです。不思議なもので、たとえ失敗しても次の道が見つかるものです。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

親は自分の古い価値観を押し付けないで、「大変な道かもしれないけどあなたの人生だから頑張ったら良い」と応援してあげて欲しいと思います。また、一回失敗したからといって、もうこの子はダメだと思わないで欲しいとも思います。日本人は安定を求め過ぎるのではないでしょうか。
もちろん、安定を求めることがいけないわけではありません。結果的に、自分の志した職業が安定していたら良いわけです。「自治体に入って街の人を喜ばせたいという志があって、それがたまたま安定している職業だった」などであれば、とても良いと思います。自分のやりたいことがそこにあるのですから。

 

次回の「Vol.24」は12月24日(金)にお届けします。お楽しみに!

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