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特集

【玉井式教育学III】– Vol.24 – 玉井先生が考える「グローバル教育」とは

2021年12月25日

【玉井式教育学III】– Vol.24 – 玉井先生が考える「グローバル教育」とは

これからの子どもたちは、これまでよりも世界に目を向けなければいけない時代を生きることになります。今のままの教育で良いのか、変わっていかなければいけない点は何なのか。グローバル時代を生きる子どもたちの成長のために、どのような価値観が必要なのでしょうか。
何のために教育するのかという、教育の価値観をしっかり持って、「親が笑顔でいること」「子どもへ何よりも愛していると伝えること」そして、「花(成果)を咲かせることだけでなく、丈夫な根っこ(土台)を育ててあげること」を大事にする。そう言うのは、「世界に負けない子に育てる」教育を提唱し、独自の能力育成教材を開発し続けてきた玉井満代先生。

玉井先生の考える子育てと教育について、48回にわたり、さまざまな視点でお届けします。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

《教えてくれたのは》
(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ
代表取締役 玉井満代さん

京都市生まれ、ICT教材クリエイター・脚本・演出家。20年にわたる全国数百の学習塾での指導経験を生かして、学校、またインド、ベトナム、シンガポール等で続々と導入されている「玉井式 国語的算数教室®」「玉井式 図形の極®」など、パソコン・タブレットを使用して学習する教材を全国展開。2021年現在、日本全国で24,000人が学習しており、有名私立小学校・大手学習塾・幼稚園・保育園及び学童などで広く活用されている。また、インド著書には「世界に出ても負けない子に育てる」(青春出版社)他。国内外での年間講演回数は120回(2018年度)を超える。洛南高等学校附属小学校で「玉井式 図形の極®」が授業カリキュラムとして取り組まれている。また、2021年度より、奈良育英小学校(現 奈良育英グローバル小学校)の副校長に就任。

>> TAMAISHIKIオフィシャルサイト
>> 奈良育英グローバル小学校

 

– 編集部 −
第24回目のテーマは「グローバル教育」。
これからますますグローバル化が進み、重要となる時代になっていきます。
玉井先生と奈良育英小学校が考える、未来を見据えた「グローバル教育」について、お話しいただきました。

周囲に流されず疑問を持つ力
「クリティカルシンキング」

慣習や認識というのは自分の一番周辺にあるものに飲み込まれ、植え付けられていくものです。例えば理科の授業で、なぜかカブトムシや蝶について習うのが当たり前、なぜか夏はアサガオを育てるのが当たり前ということを、あまり疑問に思いませんよね。他にも昆虫や花はたくさんあるのに、不思議と全国の学校で同じことを習う傾向にあります。大人も子どもも無意識に刷り込まれているのだと思います。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

もし、今のコロナ禍において、お葬式のときは黒いマスクでないと失礼だと、あるマナー講師が言い出して広まったとしたら、黒いマスクを買って行かないといけないと思ってしまいますよね。噂が広まり周囲がそうなっていくと、周囲に合わせて黒いマスクをしなければいけないと思い込むかもしれません。
しかし、悲しみの色を表すのが黒だとしても、コロナ渦ではない時に、たまたまマスクをしてお葬式に参列するとして黒のマスクを購入したでしょうか。(黒いマスクは売られていたのでしょうか?)マスクが白で何がいけないんだろう?と疑問に思っても良いのではないかと思います。何事にも疑問に思わない人になると、声の大きい人に巻かれてしまい、流されてしまうのではないでしょうか。
また、今の日本社会は、情報がたくさんあるようで、実は情報弱者だということをわかっておかなければいけません。世界語と呼べるものは、すでに英語や中国語になろうとしており、日本語でしかニュースやネットの情報を見ない私たちへの情報は限られたものになっているからです。

価値観を「グローバル」に

グローバルというのは、決して英語ができるようになるということではなくて、「価値観がグローバル」という意味です。世界的な視野で物事を見て、捉え、考えられることです。加えて日本人としてのアイデンティティを持つべきです。

母国はやはり第一の故郷だと思います。その国に生まれた以上は、その国の価値観をしっかり持たないといけない。これは自己肯定感と似ているのですが、自分の国に誇りを持っているからこそ、他の国も認められるものです。自国のアイデンティティを持ちながら、他の国の文化や慣習をしっかり認めた上で、議論できる能力が大切なのです。英語などの語学はコミュニケーションツールですが、そのツールを使ってお互いの価値観を認め合うということです。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

日本人のアイデンティティとは、国の歴史を知り、成り立ちを知り、例えばわかりやすく言うと、浴衣なども着られるようになっておくこともそのひとつです。実は民族衣装はとても大事なのです。5〜6年前にインドに行った時にはサリー(インドの民族衣装)を着ている人が多かったのですが、今はスーツやジーンズを履いている人が増え、少し残念な気持ちになります。
日本に来ている海外の人がよくレンタル着物を着て京都を歩いているのですが、やはり日本人も日本人として普通に着物を着ることができる人が増えたり、奈良には古墳がいっぱいありますが、そんなことも日本人としてもっと掘り下げて知っていても良いのではないかと思います。
そういったことを知りたくて「日本に行ってみたい」と思う海外の人もいますが、日本人自体があまり知らないとなると、「あなたは自国のことをどう思っているの?」と首をかしげられるのではないでしょうか。

 

「日本人」としての
アイデンティティを持つこと

日本人は西洋の文化をすぐにミックスできます。例えば結婚式。和装で神前式をしたあと、ウエディングドレスで披露宴といったことがあります。それはそれで良いことだと思います。いろんなものを認めてミックスして、楽しんでいるのですから。そこは日本人の素敵な一面でもあります。ただそういった中でも、やはり“日本人”としての価値観を子どもたちに持って欲しいと思います。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

「日本人として〜」と言うと、「右寄りだ」などと勘違いされるかもしれませんが、それはそういう表現をしているだけで、シンプルに日本人であることに誇りを持てるよう文化や伝統に触れながら、日本人としてのアイデンティティを育んで欲しいということです。しかし、その価値観は時代とともに変わっていく部分もあります。江戸時代と比べると全く違う価値観が今の時代にはあるでしょう。きっとこれからも変わる部分があると思いますが、子どもたちが日本人としての感性で、良い方向に進むのであれば、良いのだと思います。疑問を持って変えていくべき認識や慣習があり、一方では日本人としてのアイデンティティを持つ。この両方のバランスが大切なのではないかと思います。

チャレンジをしない
今の日本に必要なこと

猿の面白い実験の比喩的なお話があります。 3匹の猿がいました。天上からたくさんのバナナが吊下がっています。そこに登っていけるように高い棒が置かれています。3匹ともそれに登り、バナナを取ろうとしました。しかし、バナナを取ろうとした瞬間に冷水のシャワーが出てくるため、結局バナナは取れなくて、水浸しになるという状態に。その後、猿たちがどうなるかという研究でした。
3匹は何回かトライしたのですが、そのうち諦めて取ろうとしなくなりました。ここで、3匹のうち1匹だけ、それを知らない新しい猿に入れ替えてみました。そうすると、その1匹は最初登ろうとしたのですが、登らなかったのです。どうしてなのか。おそらく他の2匹が邪魔をして止めたようなのです。同様にもう1匹入れ替えると最初から登ろうとしない。3匹とも入れ替わった時にはもうバナナに見向きもしなくなったそうです。結局、入れ替わった猿はなぜ登ってはいけないのかを知らないまま、登ることをしなかったのです。

人の場合も、こんなふうに伝わっていくのではないかと思います。不思議な話だったのですが、周りに流されてしまうと、このように理由もわからないままチャレンジしなくなるのではないでしょうか。

ですので、思い込みって本当に恐ろしいなと思います。私は経験値の中で「無理かも」と思っていても、やってみたら「できた」ということが多々ありました。「チャレンジしたらできるかも」という気持ちが大切なのだと思います。
誰が最初に宇宙に行こうと思ったのか、誰が最初にナマコを食べようと思ったのか。チャレンジした人がいたからこそ発見があったわけです。

しかし、そういったチャレンジできる人が、日本人には少なくなっているように思います。大人が先回りして、「それは危ないからやめておいた方がいい。こっちの方が安定しているから」と止めてしまっているのはないでしょうか。いつの間にかチャレンジ精神が減ってしまったのでしょうか。ビジネスにおいても、「自分はこれだ」と新しいことを始めるような人は減っていると思います。

経験値として大切なことは、他の人が望むことを提供しながら、その中に自分の意思や主張を落とし込んでいくことです。「相手が納得しなくては受け入れられない経験」をして欲しいと思います。それは媚びるのではなく、また「このやり方が正しいんですよ」と押し付けることではなく、相手をリスペクトし、望んでいることに共感しながら、相手にわかってもらう努力をしっかりしていくことです。

教育の目的は、子どもの人生が幸せになることです。
周りに飲み込まれず、しっかりとグローバルな価値観を伝え、チャレンジできる環境を整えてあげられれば、子どもたちの新しい未来はきっと切り拓かれるのではないでしょうか。

 

次回の「Vol.25」は1月7日(金)にお届けします。お楽しみに!

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