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特集

【玉井式教育学V】– Vol.34 – 公式を覚えるだけではない、意味を理解する算数とは?

2022年3月11日

【玉井式教育学V】– Vol.34 – 公式を覚えるだけではない、意味を理解する算数とは?

これからの子どもたちは、これまでよりも世界に目を向けなければいけない時代を生きることになります。今のままの教育で良いのか、変わっていかなければいけない点は何なのか。グローバル時代を生きる子どもたちの成長のために、どのような価値観が必要なのでしょうか。
何のために教育するのかという、教育の価値観をしっかり持って、「親が笑顔でいること」「子どもへ何よりも愛していると伝えること」そして、「花(成果)を咲かせることだけでなく、丈夫な根っこ(土台)を育ててあげること」を大事にする。そう言うのは、「世界に負けない子に育てる」教育を提唱し、独自の能力育成教材を開発し続けてきた玉井満代先生。

玉井先生の考える子育てと教育について、48回にわたり、さまざまな視点でお届けします。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

《教えてくれたのは》
(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ
代表取締役 玉井満代さん

京都市生まれ、ICT教材クリエイター・脚本・演出家。20年にわたる全国数百の学習塾での指導経験を生かして、学校、またインド、ベトナム、シンガポール等で続々と導入されている「玉井式 国語的算数教室®」「玉井式 図形の極®」など、パソコン・タブレットを使用して学習する教材を全国展開。2021年現在、日本全国で24,000人が学習しており、有名私立小学校・大手学習塾・幼稚園・保育園及び学童などで広く活用されている。また、インド著書には「世界に出ても負けない子に育てる」(青春出版社)他。国内外での年間講演回数は120回(2018年度)を超える。洛南高等学校附属小学校で「玉井式 図形の極®」が授業カリキュラムとして取り組まれている。また、2021年度より、奈良育英小学校(現 奈良育英グローバル小学校)の副校長に就任。

>> TAMAISHIKIオフィシャルサイト
>> 奈良育英グローバル小学校

 

– 編集部 −
第34回目のテーマは、「本来学ぶべき算数」について。
「算数の公式がわからないから解けない」となるのは、本当の意味で理解をしていることにはなりません。では、なぜそのようなことが起きてしまうのでしょうか。
また、日本と世界の算数のレベルや勉強方法にはどのような課題があるのかなどをお話しいただきました。

答えの出し方を教えるのではなく
想像させること

算数の文章題が苦手になる子どもたちをみかけますが、それは算数の力が足りないからではなく、教育の中で先に公式を教えてきた結果だと思います。本来、子どもは想像力が豊かなはずですが、「答えはこうだよ。なぜならこうだから…」というふうに正解か不正解かで教わるばかりだと、算数に必要なイメージング力が削がれていくのではないでしょうか。

もちろん、算数は公式を覚えたほうが早く答えを導き出せるので、そう教えてしまうのもわかります。公式を覚えて正解すれば丸をもらえるので、子どもも悩まなくて済みます。
ところが、そのような教え方は時間が経つと「公式を忘れたからできない」となってしまう傾向があるのです。結局、算数の本来の意味を教えていないからそういうことになっていくわけです。こうなると、後で忘れるような教育に時間と労力をかける意味は何なのか、「あの時間はなんだったんだ?」と疑問が生じます。

玉井式は、公式を覚える前に「考え方」や「意味」を理解することを大切にしているので、後から公式を学んだときに「公式を覚えなくても解くことができる」ように作っています。
例えば、玉井式の問題には、「答え」の欄だけではなく「式や考え方」という欄があって、式でなくても図や絵でもいいですし、自分の考え方を書けばいいようになっています。そこには「早く答えを出してください」という意図ではなく、子どもたち自身が「どう考えたか」という過程を大事にしています。考え方の方向性が全く違っていたら軌道修正してあげないといけないですが、それ以上に、子どもたちのほうが見事に考えていることに驚かされることも多々あります。子どもは、大人では考えつかない想像力を持っているのです。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

日本の算数を習う順番が
そもそも合っているのか

私がこの春に出版する本「小学生までに育みたい自己肯定感 ICT教材クリエーターのエドテック教育の実践(小学館)」にも書いているのですが、算数はカリキュラムや教える順序を変えたほうが良いと思っています。
例えば分数でいえば、最初は「5/10+2/10」など分母が分子より大きく分母が揃った公式を教えます。高学年になると「仮分数(分子が分母より大きい、または分子と分母が等しい分数)」や「帯分数(整数と分数でできている数)」を教えますが、この間、実は「分数が割り算」であることを知らずに進んでいるのです。「1/2は1÷2、2/3は2÷3」といったことです。

「3÷9は?」と聞かれたとき下記のような答えの導き方があります。

パターン①
わられる数/わる数なので3/9、約分して1/3

パターン②
丸いケーキが3ホールあったとして9人で分けると、1ホール3つずつに分けられるので、1人分は1/3

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

高学年で約分と通分を教わるとき、公式、最小公倍数、最大公約数を利用して解く方法を習うのですが、本来「3÷9は?」と問われたら、パターン②のように図をイメージして1/3と導けることが大切だと思っています。
「足し算を学びました」、次に「引き算を学びました」、「掛け算を学びました」、次に「割り算を学びました」と別々ではなく、「足し算と引き算」「掛け算と割り算」は、意味が一緒なのですから、同じように割り算と分数も最初から結びつけて学んだほうが、スッキリとわかってくる子が増えると思いますし、算数が面白いと感じる子も増えると思います。

現実にそう教えられるよう、玉井式の「国語的算数教室®」や「KIWAMI AAA+ 数の極®」は、そのようなカリキュラムや順序で作っています。玉井式の教材は全く教科書準拠ではありません。教科書の内容はもちろん含めていますが、本来習うべき順序で子どもたちが学べるように並べ替えをしています。そのほうが、算数の意味を理解できるので、学校の問題も簡単になるんです。結果として、学校のテストができるようにもなります。だからこそ、多くの子どもたちに、この玉井式を使ってもらっている現状があるのだと思っています。

子どもたちのために、日本の算数のカリキュラムや習う順序を変えたほうが良いと思っています。今の教科書を改善して膨らませていけば、算数はもっと良い方向になると思います。

 

日本の教育が変わらないのは

教育の“答え”は子どもたち自身が持っています。大人は答えを持っていないんです。大人が教育を与え、答えを出すのは子どもたちです。この数十年間の日本の教育の結果が今表れています。また、時代が変化しているにもかかわらず、教育のあり方を変えられないのは残念なことです。

過去に「ゆとり教育」を提唱した人が、「あれは失敗だった」とバッシングされたこともありましたが、決めて取り入れたのは国ですから、提唱者にリスクを負わせることではないと思います。
「ゆとり教育」の弊害などと言われますが、その論点自体は間違いではないのです。ただ、「ゆとり教育」の目的を本当に実現しようとしたら、音楽は音楽の専門家、体育はスポーツの専門家が教えるといったように、教える人も含め改革が必要だったと思います。けれども、実際教えるのは現場の先生たち。「研修を受けてください」と言われても「どうやって?」となりますよね。本当に必要なポイントを抑えず「ゆとり」だけを取り入れた結果だったのだと思います。

「ゆとり教育」は、詰め込んだりせずに子どもの強みを見つけながら進めたり、偏差値だけで学校を決めたりしないようにと、本当は理想的な教育なのですが、ただでさえ小中学校の先生たちは部活もあり大変な働き方をしている中で、新しい人材を増やすなど、制度をしっかりと設計する必要があったと思います。

私の考えですが、義務教育においても、学校は公立ではなく全て私立の学校になって授業料は国が出す。そして、各学校がグルーバル化を目指すとかプログラミング教育に力を入れるなど、特色を出せると良いですよね。学校のトップは自分で責任を取りながら教育を進めていけばいいわけです。人気のある学校、ない学校が出てくるかもしれませんが、だからこそ、学校にアイデアや工夫、オリジナリティが生まれるかもしれません。

世界と比べた日本の算数教育

日本の算数のレベルは非常に高いです。今の中学入試の問題は世界中でも本当に難しいと言われていますし、数学も海外より難易度の高いことをしています。

今年のセンター試験は、数学1Aの平均点が非常に低かったようです。それは、長文を読解して解く問題が増えたためかもしれません。逆に、そういう問題になると他国のほうが点数を取れるのではないかと思います。日本は世界と比べて難易度の高い算数をしていてできる子も多い。けれど、問題の種類を変えられて、長文がたくさんあるような数学の問題になったら、順位は逆転すると思います。

日本の子どもたちは読解力が足りていないのではと近年言われ、教育改革が謳われています。
私たち玉井式は、2010年頃から日本語の読解力がないと本来の数学はできないと、ずっと提唱してきました。最初は受け入れられず、そんなことはないという論調が多かったです。当時、読解力と算数を結びつけた「国語的算数教室®」を開発した時、否定されたものです。今となっては、それが当たり前になりました。

(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

長文読解など、より思考力が必要とするような問題に変えていくことで、日本の子どもたちに本当の算数の楽しさを知って欲しいと思います。

 

次回の「Vol.35」は3月18日(金)にお届けします。お楽しみに!

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